エアラインの上級会員、到達にいくら必要?

参考:2016/11/7 6:30日本経済新聞 電子版

最上級会員はファーストクラス搭乗客と同じ専用ラウンジを使える(羽田空港国際線ターミナルの「ANA SUITE LOUNGE」)
最上級会員はファーストクラス搭乗客と同じ専用ラウンジを使える(羽田空港国際線ターミナルの「ANA SUITE LOUNGE」)
専用の手続きカウンターや優先搭乗、豪華なラウンジまで――。大手航空会社は利用回数の多い客向けに特別なサービスを提供しています。出張慣れしたビジネスマンにはおなじみの上級会員制度ですが、その昇格のコストを自腹で負担するのだったら一体いくらかかるのでしょうか。

■ランクによってサービス内容に差

「空港ではお金を一切使わなくなりましたよ」。東京都の自営業、高橋和晶さん(43)は笑います。2014年にANAホールディングスの最上級の会員資格を得てから毎年、最上級資格を更新しています。空港では上級会員向けの専用ラウンジでアルコール類を含む食事が楽しめるほか、シャワーで汗を流すこともできます。サービスはすべて無料で、海外の空港でも同様です。「上級会員の魅力はなんといってもラウンジが使えること」(高橋さん)。国際線に乗る際は2時間以上ラウンジに滞在できるようにスケジュールを組んでいるといいます。 ANAホールディングスと日本航空は、それぞれ「ANAマイレージクラブ」「JALマイレージバンク」という会員制度を設けています。飛行機に乗るたびにマイルがたまり、特典航空券や様々な商品に交換することができます。年会費を払ってクレジット機能付きのマイレージカードを持てば、さらに効率よくマイルをためられます。そのマイレージ会員の中で、利用回数が多かったり、利用距離が長かったりすると上級会員になることができます。
上級会員は搭乗手続きや手荷物検査の専用入り口を通れる(羽田空港)
上級会員は搭乗手続きや手荷物検査の専用入り口を通れる(羽田空港)
上級会員は複数のランクに分かれています。ANAは下から「ブロンズ」「プラチナ」「ダイヤモンド」の3ランクが、日航は同様に「クリスタル」「サファイア」「JGCプレミア」「ダイヤモンド」の4ランクがあります。それぞれの獲得条件をクリアすると翌年の1年間はそのランクに見合ったサービスが受けられます。上級会員の上位ランクは手荷物検査でも専用入り口を通れます。時間帯や混雑具合にもよりますが、羽田空港の国内線だと、一般客よりも5~10分ほど早く済む場合もあります。 上級会員でもランクによってサービス内容に差があります。例えば、繁忙期で予約が取りにくい時期に役立つ先行予約サービスは、ANAではプラチナ会員と最上位のダイヤモンド会員しか利用できません。ラウンジも一般向けだけでなく、ダイヤモンド会員とファーストクラスの乗客しか入れない専用施設もあります。そこではステーキなどのコース料理も無料で楽しめます。焼酎や日本酒、ワイン、シャンパンなどアルコール類も20種類近くあります。 獲得条件は搭乗距離や運賃などに基づいて与えられるポイントが基準となりまうs。ANAは「プレミアムポイント(PP)」、日航は「FLY ON(フライオン)ポイント(FOP)」と呼びます。クレジットカードによる買い物の支払いでもためられるマイルと異なり、実際に飛行機に搭乗しないと得られません。そのため出張の多い会社員などが上級会員となる場合が多いのです。日航は搭乗回数も基準に入れています。

エアラインの上級会員、到達にいくら必要?

では上級会員になるには、どの程度の費用がかかるのでしょうか。基準の最も低いANAのブロンズ会員と日航のクリスタル会員はどちらも3万ポイントが必要です。例えばANAカードの一般会員が12月中旬、羽田空港から那覇空港へANAの割引運賃(旅割55)で行くと1476ポイントたまります。単純計算すると21回乗れば3万ポイントに達するので、仮に運賃が1万3790円とすると約29万円となります。もちろん実際には、5月の大型連休や夏休みの時期など繁忙期は運賃が高くなったり、安い運賃だと加算されるポイントも少なくなったりするので、必要な金額はさらに多い場合もあります。 ■差別化しつつ乗客を囲い込む
上級会員の荷物には優先受け渡しのタグが付く(羽田空港)
上級会員の荷物には優先受け渡しのタグが付く(羽田空港)
余裕があるなら、さらに上のプラチナ会員(ANA)やサファイア会員(日航)をめざしてもいいかもしれません。一度でもこれらの会員になれば、年会費の支払いだけで上級会員と同様のサービスを毎年受け続けられる特別なクレジットカードへ入会できるからです。これらの基準は5万ポイント以上。上記の例だと約47万円となりますが「50万円以上かかるのが一般的」(高橋さん)だ。 海外の航空会社でも同様の上級会員制度を設けているところが多いです。「アライアンス」と呼ばれる航空連合ごとに提携し、上級会員へ共通のサービスを提供しています。例えば日航は米アメリカン航空や英ブリティッシュ・エアウェイズなどと「ワンワールド」を組んでいます。日航の上級会員であれば自動的にワンワールドの上級会員となり、他の航空会社でも同じサービスが受けられます。 大手航空会社がこうした上級会員制度を設ける狙いはどこにあるのでしょうか。航空・旅行アナリストの鳥海高太朗氏は「格安航空会社(LCC)と差別化しつつ乗客を囲い込むためだ」と指摘しています。日航は上級会員は増加傾向にあり、航空収入のうち一定の割合を占めるようになりました。今後もラウンジの増設や拡充などを進めていきたいとしています。 LCC各社は近年、路線や拠点を増やすなどして利便性を高め、日本でも次第に定着しつつあります。こうしたなかで大手航空会社が存在感を保つには、運賃面での価格競争を避けて搭乗回数の多い上得意客をいかに囲い込めるかが鍵となります。特別なサービスや記念品などの特典を使って利用客の心をくすぐる上級会員制度は「大手航空会社の生命線」(鳥海氏)の意味合いも持つでしょう。 airline4