トランプの政権移行はうまくいくか?

参考:2016年11月17日05時05分 朝日新聞デジタル

トランプ政権移行チームの構図
トランプ政権移行チームの構図
トランプ次期米大統領を支える政権移行チームで早くも内紛が勃発しています。ワシントン政治に精通した「共和党主流派」と、トランプ氏に近い「反主流派」の主導権争いが表面化。両者に加え、長女イバンカ氏ら「トランプ・ファミリー」も影響力を行使しています。政治経験のない異端児・トランプ氏は、政権づくりも異例づくめです。
トランプ人事、早くも内紛? 安保担当元下院議員が離脱 特集:ドナルド・トランプ氏
「チームは間違った方向に進みつつある」 政権移行チームで安全保障分野の人事などを担当していたマイク・ロジャース元下院議員は15日、チームから離脱することを表明。CNNのインタビューで恨み節を語り、チームが「混乱している」と暴露しました。 ロジャース氏は連邦捜査局(FBI)の特別捜査官や下院情報特別委員長を歴任した共和党ベテラン。テロ対策に精通し、テロ対策担当大統領補佐官への起用も取り沙汰されていました。 インタビューでは「国家安全保障に関する(人事を含む)書類や政策方針もまとまった。ニューヨークに送った書類で私が目を通した名前は、いずれも適格者だ」とも語りました。 政権移行チームは、ワシントンで活動する政治に詳しい共和党「主流派」と、「反エスタブリッシュメント(既得権層)」を掲げるトランプ氏を支え、ニューヨークのトランプ・タワーに陣取る「反主流派」の二つの勢力に分かれています。 主流派のロジャース氏が「ニューヨークに送った」と言ったのも反主流派へのあてつけです。ワシントンで作った原案をニューヨークが押し返すというような、両者のつばぜり合いが日増しに激しさを増しているようです。 トランプ氏は13日、ホワイトハウスの要職として、大統領首席補佐官に党主流派に近いラインス・プリーバス党全国委員長を、首席戦略官・上級顧問に反主流派の急先鋒(きゅうせんぽう)で参謀役の選挙対策最高責任者スティーブン・バノン氏を起用。あえて対等に位置づけました。 チーム内では国務長官ポストをめぐっても、保守強硬派のジョン・ボルトン国連大使を推す主流派と、トランプ氏と近いルドルフ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長を推す反主流派が対立しているとされています。 政権発足まで約2カ月となる中での内輪もめに、関係者は「作業が1カ月以上遅れている」と気をもんでいます。 15日、トランプ氏の執務室があるトランプ・タワーを政権移行チームの執行委員長のペンス次期副大統領や副委員長のジェフ・セッションズ上院議員がワシントンから訪れ、約6時間、人事について協議しました。 ただ、こうした人事をめぐる混乱は、トランプ氏のビジネス手法の特徴でもあるようです。ニューヨーク・タイムズ紙は「ライバル同士を部下に置いて競わせるビジネスのやり方と同じ」と指摘します。 あえて自分と反対意見の人間を起用することも。商務長官ポストに浮上している著名投資家ウィルバー・ロス氏は、環太平洋経済連携協定(TPP)を「私は好きだ」と公言しています。 15日夜、家族とステーキハウスで会食した後、トランプ氏は煙に巻くように、ツイッターでつぶやきました。 「非常に計画的に選考が進んでいる。誰が最終選考に残るのか知っているのは、私ただ一人だ」

■長女の夫クシュナー氏を重用

政権移行チーム内で存在感を増しているのが、「トランプ・ファミリー」です。 11日のチーム刷新で、新たに長男ドナルド・ジュニア氏(38)や次男エリック氏(32)、長女のイバンカ氏(35)とその夫ジャレッド・クシュナー氏(35)の4人が加わりました。 4人とも政治経験はありませんが、大統領選でトランプ氏を支えてきました。中でも「腹心」として重用されているのがクシュナー氏です。 「ここでは何人の人間が働いているのだろうか」 10日のホワイトハウス。トランプ氏とオバマ大統領が初会談をしているさなか、大統領執務室などがある「ウェスト・ウィング(西棟)」や敷地内の庭を2人で散策しながら、オバマ氏の右腕デニス・マクドノー首席補佐官に、熱心に質問していたのがクシュナー氏でした。 同氏は不動産開発業や投資、新聞出版も手がける実業家。2009年に知人の紹介で知り合ったイバンカ氏と結婚しました。大統領選ではデータ収集などで陣頭指揮を執り、トランプ氏の演説の原稿も手がけました。トランプ氏がイスラエルとの関係強化を訴える際、クシュナー氏を「私の義理の息子はユダヤ人で素晴らしいヤツだ」と紹介することもしばしばです。 クシュナー氏は人事に大きな影響力を発揮しています。米メディアによれば、移行チームの委員長から、ニュージャージー州のクリス・クリスティー知事を外させたのはクシュナー氏の意向とされています。かつてクリスティー氏が検事時代に、クシュナー氏の父親を脱税や違法政治献金などで起訴、刑務所暮らしを強いられたことへの意趣返しとも報じられています。 今回のロジャース氏の離脱も、クリスティー氏に近い人物だからとの説もささやかれています。首席補佐官に、プリーバス氏を強く推したのも、クシュナー氏とイバンカ氏でした。 米国では、「反縁故者法」でホワイトハウスや政府の要職に大統領の家族を任命することを禁じています。ただ抜け道もあり、無給であれば、補佐官としてホワイトハウスで仕えることは可能だといいます。 CBSニュースなどは、トランプ氏がクシュナー氏ら家族4人に対し、最高機密情報にアクセスする権限を与えるよう、ホワイトハウスに要請したと報じました。家族にこうした権限を与えることは異例で、トランプ氏は16日朝、自らのツイッターで否定しました。 家族らはトランプ氏のビジネスを受け継いでおり、家族による政権運営は独裁的との批判を招くばかりか、政治と事業との結びつきも問題になりかねません。(ワシントン=峯村健司、佐藤武嗣)  

トランプ陣営の幹部離脱 政権移行で人事対立か

参考:2016/11/17 1:44 日本経済新聞

【ワシントン=川合智之】

 トランプ次期米大統領の政権移行チームから外交・安全保障の専門家が相次ぎ離脱しました。米中央情報局(CIA)長官候補だったマイク・ロジャース元下院議員は15日、移行チームを辞任したと発表しました。候補指名を争った元神経外科医ベン・カーソン氏も政権入りしないと広報担当者が表明しました。移行チーム内で人事を巡る対立があるとの見方があります。

次期政権入りが取りざたされる顔ぶれ ロジャース氏はニュージャージー州のクリスティー知事に近い。クリスティー氏は元側近が今月有罪判決を受け、移行チームの副委員長に降格しました。米メディアによると、クリスティー氏は10月にトランプ氏の女性蔑視発言が報じられた際に擁護するのを拒否し、不興を買いました。クリスティー氏が選んだチーム関係者も失脚したといいます。

 クリスティー氏はトランプ氏の長女イバンカさんの夫で政権移行チームの要であるジャレッド・クシュナー氏との確執があり、クリスティー氏と関係が深いロジャース氏も追放されたとの見方を米メディアは伝えています。

 カーソン氏は米紙ワシントン・ポストのインタビューに答え、次期政権入りを望まない理由について「私は様々な問題に対し自由に働きたい」と語りました。安全保障の専門家マシュー・フリードマン氏もチームを離れました。

 移行チームのオフィスは首都ワシントンにありますが、トランプ氏や家族らはニューヨークにいます。物理的にも距離があり意思疎通が十分でなく、両者間で意見対立があるとの指摘もあります。

 幹部人事の調整は15日も続きました。トランプ氏はニューヨークのトランプタワーでペンス次期副大統領ら移行チーム幹部と新政権の人選などを協議しました。

 国務長官の有力候補として、ジュリアーニ元ニューヨーク市長らが候補となっているほか、ネオコン(新保守主義者)のボルトン元国連大使らの名前があがっています。ジュリアーニ氏は外交経験がなく、米CNNによると、同氏の法律事務所がかつてベネズエラの石油会社と取引があったと報道。利益相反も指摘されています。

 著名投資家のカール・アイカーン氏は15日にトランプ氏と会談した後、商務長官は投資家のウィルバー・ロス氏、財務長官は選対の財務責任者で銀行家のスティーブン・ムニューチン氏が候補だとツイッターで明らかにしました。

 ロス氏は1997年に日本への投資を始めた知日家で、大統領選ではトランプ氏の経済政策顧問を務めました。ムニューチン氏は米証券大手ゴールドマン・サックスの元パートナーで、ゴールドマンを退社後はヘッジファンドを創設。大統領選ではトランプ陣営の財務責任者として選挙戦を支えました。

 約4千人の省庁幹部の人事にも時間がかかりそうです。移行チームはウェブサイトで人材を募集していますが、選考は進んでいません。オバマ政権の幹部を横滑りさせる検討も始めたといいます。

 オバマ大統領が2008年大統領選で勝利後、国務長官ら主要閣僚を発表したのは12月1日。11月下旬には感謝祭の休日もあり、余裕はあまりありません。トランプ氏は15日「(閣僚の)最終候補を知っているのは私だけだ!」とツイッターに投稿しました。