参考:日経Gooday 2017/1/17 荒川直樹=科学ライター
東京の冬でも油断大敵、隠れ冷え性に効く対策法は?
慢性疲労、腰痛、肩こり、感染症、発がんの原因に
まだまだ男盛りの中高年に容赦なく襲いかかる体の悩み。医者に相談する勇気も出ずに、1人でもんもんと悩む人も多いことでしょう。そんな人に言えない男のお悩みの数々を著名な医師に尋ね、その原因と対処法をコミカルで分かりやすく解き明かします。楽しく学んで、若かりし日の輝いていた自分を取り戻しましょう。
飲料メーカー勤務の39歳。空手で鍛えた肉体と根性がセールスポイントの営業マンだ。真冬にワイシャツ姿で商品を配送し、「燃えるセールスマン」なんてニックネームをつけてもらったこともある。そのオレが内勤になってからどうも調子が悪い。手先、足先が冷えて、背中から首がものすごくこるようになった。夜もなかなか眠れず、疲れがとれない気がする。こんな症状は、確か女性が悩む冷え性そのもの。誰にも相談できないので、秘かに冷えを解消したい…。今も宴会があると「いよっ、燃える男!」と声をかけてくれるけど、実はももひきをこっそりと履いているんだ…。

冷えが免疫力を低下、がんの原因にも
こうした冷えは、自覚するしないにかかわらず、さまざまな病気の引きがねになったり、症状を悪化させたりすることにつながります。このように、冷えが不調をもたらす原因の一つは自律神経にあると考えられています。 班目院長は「自律神経のうち副交感神経が優位になると、内臓の働きが活発化する。しかし、冷えはこの副交感神経の働きを抑えこんでしまう」と話しています。逆に、冷えで活発化する交感神経は、多くの内臓機能を低下させたり、筋肉をこわばらせたりする働きがあるので、全身にさまざまな影響が出るというわけです。また、副交感神経は体内の免疫機能を担っているリンパ球の働きとも密接な関係にあります。冷えによる副交感神経の低下は免疫力の低下をもたらし、感染症にかかりやすくなったり、さらにはがんを発症しやすくなるといいます。冷えがもたらす病気の例 |
●筋肉のこわばり、こり 肩こり、首こり、腰痛など |
●呼吸器の機能低下 風邪を引きやすくなる、喘息など |
●免疫機能の低下 感染症にかかりやすくなる、発がん |
●全身の症状 慢性疲労症候群、うつ病など |
わきの下で冷えチェック、生活改善を
では、いったい自分のどこが、どれぐらい冷えているのか? 朝起きたときにチェックする方法があります。それは、まず手をわきの下に差し込み、その温度と体の次の5カ所の温度とを比較するというものです。- 上腹部
- 下腹部
- お尻
- 太腿
- 二の腕
外出時は高熱量の着火式カイロがお勧め
そして、冷えている場所は積極的に温めましょう。外出時などに便利なのは、使い捨てカイロです。ただ、使い捨てカイロは得られる熱量が1時間あたり770カロリーほどと、冷えの改善にはやや足りません。そこで班目院長が薦めるのは、ベンジンを使用した着火式カイロです。これは1時間あたり1万カロリーの熱量があり、冷えた場所を十分に温めてくれます。 班目院長は「冷えで困っている人は、着火式カイロを2つ使うといい」と話します。例えば、1つをズボンの右前のポケットに入れたら、もう一つは左後ろのポケットに入れます。時々位置を変えることで、腰周りを中心に全身を温めてくれます。臨床の場で効果を上げている「湯たんぽ」
そして、班目院長がクリニックで患者の冷えを解消する「切り札」として使用しているのは湯たんぽだ。かつて就寝時の暖房として用いられてきた湯たんぽと基本的には同じですが、班目院長が臨床で使用しているものは、オフィスなどでも使用しやすいフラットなタイプ。熱量が1時間あたり13万カロリーと暖房器具のなかでもずば抜けて高く、体の冷えを改善する作用が期待できます。- お腹
- 太腿前面
- お尻
- 二の腕の後ろ側
温めて気持ちよければ冷えている証拠
班目院長は、たくさんの症例を基に湯たんぽなどを使って冷えを解消した場合の、症状改善効果について調べてきました。その結果、まず効果が期待できるのは痛みの改善であったといいます。頭痛、肩こり、腰痛などのほか、関節リウマチ患者にみられる朝の指のこわばりなども改善が見られたといいます。また、泌尿器症状(夜間頻尿、頻尿)や全身の倦怠感の改善などにもよい効果が得られたといいます。さらに、がんで治療中の患者の症例では、湯たんぽで温めることによって、体内で免疫を担当するリンパ球が増えるなどの効果が確認できたといいます。 こうした症状は、もちろんビジネスパーソンにもよく見られます。「冷え」と関係があるのかを知りたい人に対して班目院長は、「まずは、自分で温めてみることをお勧めする。医療費の節約にもなるし、仕事の効率もアップする」と話しています。湯たんぽなどを使って温めてみて、症状が改善するようなら効果があるということです。必要に応じて、東洋医学の外来などを受診してみてもいいでしょう。
班目健夫(まだらめ たけお)さん青山・まだらめクリニック 院長 |
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