アレルギー:花粉性結膜炎を重症化させない治療&患者指導

参考:2017/1/31 小板橋律子=日経メディカル

リポート◎花粉性結膜炎を重症化させない治療&患者指導

非眼科医でも抗アレルギー点眼薬の積極処方を

診断に迷ったら涙液総IgE検査キットの利用も選択肢

花粉症患者では鼻症状に加え眼掻痒感が生じやすいですが、それだけでは眼科を受診せず市販の点眼薬で対処する患者が少なくありません。そのような患者を重症化させないため、鼻症状を主訴として受診した患者の眼症状にも適切に対応したいです。そのコツを眼科専門医に聞きました。
「非眼科医でも、抗アレルギー点眼薬を積極的に処方してほしい」と要望する東京女子医大の高村悦子氏。
「非眼科医でも、抗アレルギー点眼薬を積極的に処方してほしい」と要望する東京女子医大の高村悦子氏。
「花粉症による眼のかゆみに対して眼科で点眼薬を処方してもらう患者は少数派。多くは、鼻症状で医療機関を受診した際に点眼薬を処方してもらうか、市販の目薬でお茶を濁そうとする」。東京女子医科大学眼科臨床教授の高村悦子氏は、花粉によるアレルギー性結膜炎(花粉性結膜炎)患者の現状をこう分析します。 しかし、市販の目薬には防腐剤や血管収縮剤などの添加物を含むものが多く、粘膜が敏感な状態にある花粉症患者が多用すると、粘膜症状を悪化させるリスクがあると指摘します。 そのため高村氏は、花粉性結膜炎症状を有する患者を診療する機会がある医師に対して、「非眼科医であっても、アレルギー性結膜炎治療の基礎となる抗アレルギー点眼薬を積極的に処方してほしい」と要望します。抗アレルギー点眼薬には大きな副作用はなく、発症早期から積極的に点眼することで、症状の重症化を抑制する効果も期待できるとの考えからです。 現在、花粉性結膜炎患者に処方できる抗アレルギー点眼薬は大きく分けると、ヒスタミンH1拮抗薬(抗ヒスタミン薬)とメディエーター遊離抑制薬がある(表1)。日本大学視覚科学系眼科学臨床教授で、庄司眼科医院(千葉県木更津市)院長の庄司純氏も、抗アレルギー点眼薬を花粉性結膜炎の基礎治療薬と位置付けています。「化粧品でいえば基礎化粧品と同じ。まずはしっかり抗アレルギー点眼薬を用いることが大事」と説明します。抗ヒスタミン薬はメディエーター遊離抑制薬に比べ即効性が期待できるため、既に症状を訴えている患者に処方しやすいようです(関連記事「抗アレルギー点眼薬:3人に1人はオロパタジン」)。
表1 花粉性結膜炎に処方できる抗アレルギー点眼薬(アレルギー.2014;63:1103-9.を一部改変)
表1 花粉性結膜炎に処方できる抗アレルギー点眼薬(アレルギー.2014;63:1103-9.を一部改変)
 

点眼開始は飛散予測の約2週間前もしくは症状発現時

抗ヒスタミン薬、メディエーター遊離抑制薬とも、「症状が出る前に点眼を開始するよう指導すると、辛い症状を出さずに飛散シーズンを終えやすい」と高村氏。これは初期療法と呼ばれる治療法。高村氏が委員長としてまとめた「アレルギー性結膜炎疾患診療ガイドライン(第二版)」は、「花粉飛散予測日の約2週間前、または症状が少しでも表れた時点」で抗アレルギー点眼薬を開始する初期療法を推奨しています。 高村氏は、「アレルギー性結膜炎の治療の目的は重症化させないこと。重症化を防ぐためにも、早めに治療を開始することが重要」と語ります。「一度、初期療法を受けた患者は、翌年も同じ治療を要望することが多い」と、患者からの評判も良いことを付け加えています。 初期療法の有効性は、メディエーター遊離抑制薬については2000年代に報告されており、抗ヒスタミン薬の初期療法については、2000年代後半から検討されています。2015年に発表されたエピナスチン(商品名アレジオン)の初期療法に関する多施設共同試験では、花粉の本格飛散開始日よりも3週間前に点眼を開始した患者群(初期投与群)では本格飛散時から投与を開始した通常投与群に比べて本格飛散開始日から2週間まで症状スコアが改善し、最大飛散時における症状も軽いことが報告されています(図1)。
図1 エピナスチン点眼薬を用いた初期療法における日本アレルギー性結膜疾患標準QOL(JACQLQ)スコアの推移(出典:アレルギー・免疫. 2015;22:110-20.)
図1 エピナスチン点眼薬を用いた初期療法における日本アレルギー性結膜疾患標準QOL(JACQLQ)スコアの推移(出典:アレルギー・免疫. 2015;22:110-20.)
  早めに治療を開始することによる重症化抑制効果のメカニズムの1つとしては、最少持続炎症(minimal persistent inflammation:MIP)という概念が提唱されています。これは、症状を発現しない程度の抗原曝露でも、炎症細胞の浸潤や接着分子の発現がみられるというもの。初期療法を行うことで、このMIPを抑制でき、重症化予防につながると考えられています。  
「涙液中の総IgE検査は、結膜局所のアレルギー反応を検出する検査法の中で唯一、保険診療での実施が認められたもの」と話す日大の庄司純氏
「涙液中の総IgE検査は、結膜局所のアレルギー反応を検出する検査法の中で唯一、保険診療での実施が認められたもの」と話す日大の庄司純氏

点眼薬の選択は差し心地重視で

抗アレルギー点眼薬の薬剤選択では、防腐剤添加の有無や患者の差し心地などから選択するとよさそうです。高村氏は、「緑内障やドライアイなどで複数の点眼薬を既に使用している患者では、防腐剤であるベンザルコニウム塩化物を含まない点眼薬を選択するとよいだろう」とアドバイスします。点眼薬が増えると防腐剤の総量も増えやすいためです。コンタクトレンズ着用者でも、コンタクトレンズへの吸着リスクを回避するべく、防腐剤無添加の点眼薬を選択したいです。 庄司氏は抗ヒスタミン点眼薬について、「抗コリン作用を気にする医師も少なくないが、第二世代の抗ヒスタミン薬では抗コリン作用を危惧する必要はなく、緑内障の患者にも処方できる」と説明します。 差し心地については点眼薬のpHが参考になります。東京歯科大学市川総合病院眼科講師の佐竹良之氏は、「涙液のpH7~7.2と同じであればしみないが、涙液よりも酸性の点眼薬はしみると訴える患者がいる」と説明します。ただし、点眼薬の好みは患者により異なり、刺激感のある点眼薬を好む患者もいます。「患者の要望に併せて選択するとよいだろう」と佐竹氏。 抗アレルギー点眼薬で十分な症状抑制効果が得られない患者では、ステロイド点眼薬の追加が必要となりますが、「ステロイド点眼薬には眼圧上昇のリスクがあるので、抗アレルギー点眼薬でコントロール不良の患者は眼科に紹介してほしい」と高村氏は要望します。庄司氏も、「ステロイドに反応しやすい患者では、2週間程度の短期間の点眼で眼圧が上昇する」と注意を喚起します。特に小児患者は、ステロイドに反応しやすいようです。  
写真1 アレルウォッチを用いた涙液中総IgE検査の様子(提供:庄司氏)
写真1 アレルウォッチを用いた涙液中総IgE検査の様子(提供:庄司氏)

診断に迷ったら涙液中総IgE抗体検査の活用を

アレルギー性結膜炎の診断を確定するためには、結膜におけるI型アレルギー反応を証明する必要があります。そのための検査法としては、「結膜好酸球の同定」「点眼誘発試験」「涙液中総IgE抗体測定」のいずれかが必要となりますが、結膜好酸球の同定に必要な結膜塗抹検査には保険点数が付いておらず、点眼誘発試験に用いる誘発薬は実用化されていません。 唯一現在、保険診療で実施できるのは、涙液中の総IgE抗体の検査です(100点)。イムノクロマト法で涙液中総IgE抗体を測定する「アレルウォッチ涙液IgE」が実用化されており、15~20分で結果を得ることができます。この検査法では、検査用のストリップを患者の下眼瞼結膜嚢に挿入して涙液中の総IgE抗体を検出します(写真1)。非眼科医でも実施可能です。庄司氏はアレルウォッチによる検査を初診患者に実施しています。「検査で陽性だったと説明すると、患者の納得を得やすい」と言います。 加えて庄司氏は、「アレルウォッチが実用化されるまでは、アレルギー以外の結膜炎と花粉性結膜炎の鑑別が難しかったが、アレルウォッチが実用化されて、ようやく簡便に区別できるようになった」と評価します。佐竹氏は、「流行性結膜炎とアレルギー性結膜炎の鑑別に迷う際は、アレルウォッチに加えアデノウイルスの迅速検査も有用」と言います。現在、結膜上皮細胞中のアデノウイルス抗原を検出する診断キットも実用化されています。 ただし、アレルウォッチが検出するのは、涙液中の総IgEであり、特異的IgEの測定はできません。そのため、アレルギー性結膜炎の原因となる抗原の確認には血液検査が必要となります。庄司氏は、血液を用いた特異的IgE検査は、患者の要望を聞きながら実施するかどうかを決めています。 高村氏は、「臨床症状のみで診断が付く場合はあえて検査で確定する必要はないかもしれないが、診断に迷う場合は有用」とアレルウォッチによる検査を位置付けます。  
東京歯科大の佐竹良之氏は「患者の重症化を予防するためにも、花粉を眼に入れない方法も指導してほしい」と要望する。
東京歯科大の佐竹良之氏は「患者の重症化を予防するためにも、花粉を眼に入れない方法も指導してほしい」と要望する。

花粉を眼に入れない生活指導も重要

花粉性結膜炎を生じるI型アレルギーでは、抗原に曝露することで症状が発現します。そのため佐竹氏は、「花粉を眼に入れない工夫も症状の軽減に有効」と強調します。 昨今、花粉防止用のメガネが実用化されているが、「花粉防止用のメガネでなくても、メガネを着用するだけで眼に入る花粉の量は約5割減る」と佐竹氏。鼻には呼吸により能動的に花粉が入りやすいですが、眼に花粉が入りやすいのは歩いたり風に当たったりしたとき。そのため、花粉が風に舞う屋外では、メガネで眼を守るよう説明するとよいとアドバイスします。また、花粉はメガネの上側から入りやすいので、屋外ではメガネに加えて帽子も着用するとより効果的と説明します。 眼に入った花粉を洗い流すことも、症状を抑える効果があります。「点眼には花粉を洗い流す効果もある。抗アレルギー点眼薬がない場合でも、花粉が眼に入ったと感じた際は防腐剤無添加の人工涙液を点眼すると症状軽減につながる」と佐竹氏。コンタクトレンズ着用者に対しては、外出時には花粉防止用のメガネを使用し、汚れを最小限にする目的で、花粉飛散中は1日使い捨てタイプのコンタクトレンズへの変更を勧めてほしいとも要望しています。