高校野球への愛がしみ込んだ、本場の喜多方ラーメン

参考:Response 2017年2月5日(日) 12時00分

【ドライブコース探訪】高校野球への愛がしみ込んだ、本場の喜多方ラーメン

喜多方市内にあるラーメン店「宝夢蘭」の店主、菅沼健仁良さん。高校野球への愛はホンモノだ
喜多方市内にあるラーメン店「宝夢蘭」の店主、菅沼健仁良さん。高校野球への愛はホンモノだ 《撮影 井元康一郎》
喜多方市内にあるラーメン店「宝夢蘭」 《撮影 井元康一郎》
喜多方市内にあるラーメン店「宝夢蘭」 《撮影 井元康一郎》
喜多方市内にあるラーメン店「宝夢蘭」 《撮影 井元康一郎》
喜多方市内にあるラーメン店「宝夢蘭」 《撮影 井元康一郎》
よく見ると「!」マークはバットとボールになっている 《撮影 井元康一郎》
よく見ると「!」マークはバットとボールになっている 《撮影 井元康一郎》
店主おすすめのチャーシューメン 《撮影 井元康一郎》
店主おすすめのチャーシューメン 《撮影 井元康一郎》
濃い味に馴染んだ鹿児島人にとっても大満足 《撮影 井元康一郎》
濃い味に馴染んだ鹿児島人にとっても大満足 《撮影 井元康一郎》
店内には新聞の切り抜きが所狭しと貼られている 《撮影 井元康一郎》
店内には新聞の切り抜きが所狭しと貼られている 《撮影 井元康一郎》
喜多方市内にあるラーメン店「宝夢蘭」 《撮影 井元康一郎》
喜多方市内にあるラーメン店「宝夢蘭」 《撮影 井元康一郎》
喜多方市内にあるラーメン店「宝夢蘭」 《撮影 井元康一郎》
喜多方市内にあるラーメン店「宝夢蘭」 《撮影 井元康一郎》
喜多方市内にあるラーメン店「宝夢蘭」 《撮影 井元康一郎》
喜多方市内にあるラーメン店「宝夢蘭」 《撮影 井元康一郎》
日産リーフで会津若松から山形の米沢へ 《撮影 井元康一郎》
日産リーフで会津若松から山形の米沢へ 《撮影 井元康一郎》
日産リーフ 《撮影 井元康一郎》
日産リーフ 《撮影 井元康一郎》
日産のEV『リーフ』で会津若松から山形の米沢に向かうべく、会津縦貫道を走行。終点の猪苗代インターチェンジの表示を見て「ちょっとお腹もすいてきたことだし、喜多方ラーメンでも食べてみるか」と思い、街道を外れて喜多方市内に入りました。 喜多方ラーメンは全国のラーメンの中でも知名度は高いほうで、多くの人がその名を知る存在です。が、どのラーメン屋が美味しいかは皆目見当がつきません。そういうときに入念に評判を下調べして行くという手もあるのですが、他人の評判に乗っかるのは基本的に楽しくありません。当てずっぽうに店に入って美味しかったら喜び、ハズレを引いたらそれはそれで思い出にするというのが筆者の行動様式です。 ということで、予備知識なしに喜多方市街を走ってみると、たしかにあちこちにラーメン屋があります。中には東京でもよく見かけるチェーン店も。本場に店を出すとはいい度胸してるななどと思いつつ、せっかくなら単立系だと思って見回しているうちに、どえらく古い3階建てのビルが目に飛び込みました。コンクリート壁のひび割れ、くすんだアルミサッシ、破れてほとんど骨組みだけになった庇、錆びたシャッター、すべて100点!!そして、そのビルで立派に営業しているラーメン屋さんがあります!! 看板を見ると「あ!ラーメン屋だ」と大書されています。そこに割ぽう着をきた男性が現れ、「この!マーク、バットとボールになっているんですよ」と話しかけてきました。何の脈絡もなく野球の話をされてたまげましたが、その人物はラーメン屋の店主さんでした。暖簾に書かれた店名は「宝夢蘭」。これがホームランを漢字表記したものだと理解したのは店を出た後でした。 袖触れ合うも他生の縁。その店でラーメンを食べようと思い、店内に入ります。すると、店内は壁一面、高校野球の記事やトーナメント表でいっぱいでした。その中に店主さんのことを掲載した地元紙の記事のコピーがあり、経歴を知ることができました。 店主の菅沼健仁良(けんじろう)さんは根っからの野球好き。喜多方工業高校のキャッチャーとして甲子園を目指していましたが、県大会を突破することができず涙を呑みました。その後、飲食店経営のかたわら審判のスキルを身に付け、卒業後30年以上を経て審判として念願の甲子園の舞台に立ったといいます。 さて、その宝夢蘭の店内の席に着き、注文。メニューには普通の喜多方ラーメンやチャーシューメンのほかに、本塁打ラーメンなるものもあります。本塁打ラーメンはピリ辛の味噌味とのこと。鹿児島出身の筆者はあっさり醤油味よりこってりとした味噌味のほうがどちらかというと好きなのですが、菅沼さんのイチオシはチャーシューメンなのだといいます。野球愛丸出しの人物が本塁打ラーメンなどと名づけたものよりおススメと言われると、自分の好みを押し通すよりそっちを食べてみたくなるというものです。 オーダー後、ほどなくチャーシューメンがやってきました。丼は大盛り系が流行っている今日においてはやや小ぶりに感じられます。その中に入っているラーメンのルックスは至ってノーマルで、醤油ラーメンの表面にチャーシューが並べられ、真ん中にネギとメンマが少々。 そのチャーシューをひと口食べてみて、菅沼さんのレコメンドも道理と納得。見た目は何の変哲もないチャーシューなのですが、濃い目の煮汁でがっつりと煮込まれたとみえて、濃厚な塩味がしみています。それでいて脂身はジューシーで、噛むと肉汁がじゅわっと口の中に広がります。これは濃い味に馴染んだ鹿児島人にとっても大満足です。 しょうゆ味の汁は煮干系のダシがしっかりときき、喜多方ラーメンの特徴である太めのちぢれ麺はもっちりとした食感。これは美味しい。途中で大盛りにしなかったことを後悔したほどでした。 食べ終わってから、菅沼さんに「甲子園の審判をされたんですね」と話しかけ、しばし歓談しました。菅沼さんは「あなたは高校野球が好きですか?」と問うてきました。筆者が高校生だった昭和末期は水野投手を擁する徳島の池田高や桑田・清原コンビが活躍した大阪のPL学園高、ほか高知の伊野商業高、宮崎の都城高などなど、話題性豊かな県代表が百花繚乱の高校野球全盛期。 「もちろん好きですよ」と答えました。そして「私は鹿児島出身なんですが、自分の通っていた高校が普段は弱いのにその時はたまたま強くて、甲子園出場の期待もちょっぴりあったんですよ。30年ちょっと前のことですが」と続けました。すると菅沼さんは間髪入れず「鶴丸ですか?」と言いました。 これには心底ぶったまげました。私が言ったのは「鹿児島」「普段は弱いが30余年前に一瞬強かった」の2点だけ。会津にとって薩摩は仇敵。その鹿児島のマイナー校の、しかも30年以上前の出来事を一瞬で思い浮かべられるとは、一般的な高校野球愛好家とはレベルが違います。それこそ切れ目なく全国の高校野球の動向を、並々ならぬ愛情と関心を持って見続けていなければ、一発で当てることなど到底不可能です。 たまたま入ったラーメン屋で見かけは地味ですが風味抜群なラーメンと、高校野球へのあり得ないくらいひたむきな愛情の2つを一挙両得で味わうことができ、ちょっぴりトクした気分になりました。

《井元康一郎》