歯みがき粉、100種類から選べますか?

参考:日経ビジネスオンライン 2017年7月31日(月)

乱立する選択肢、誰のため?

 「豊富な品ぞろえが自慢です!」 誰でも耳にしたことのある宣伝文句でしょう。たしかに聞こえはいいです。ですがよく考えると、どんなに選択肢が多くても最終的に購入するのは一つだけです。常に忙しく、情報疲れも指摘される現代の消費者たち。選択肢が多すぎて迷うより、本当は自分にあった商品をおすすめしてほしいと考えているのではないのでしょうか――。 そんな疑問を出発点に、日経ビジネスの7月31日号は「もう迷わせない! 消費多様化の終わり」と題する特集を組みました。取材を通じて見えてきたのは、やはり消費者が「選び疲れ」している現実です。 その象徴ともいえる光景を都内のスーパーでみつけました。場所は日用品売り場。記者は思わずつぶやきました。「これは大変だぞ……」
  特集の編集作業も終盤に差し掛かった7月下旬、記者は東京23区内のある食品スーパーにいました。目的は、商品の選択肢がどれだけ存在するのか数えること。特集で「選択肢が多すぎるのでは」と問題提起しているからには、実際どれだけの商品の種類が店頭にあるのか、自分の目で確かめようと考えたのです。 先に実施したアンケート調査では、日々購入する生活必需品について、消費者の約7割が「選択肢は5種類以下でいい」と回答していました。ところが、日用品売り場にたどりついた記者は言葉を失うことになります。自分の胸の高さほどまである陳列棚に、想定していた以上に、歯みがき粉がびっしり並べられている光景があったからです。
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まず目についたのは「G・U・M」「クリニカ」「アクアフレッシュ」といった、テレビCMなどで聞いたことのあるブランド。それぞれ定番商品だけでもフレーバーごとに3、4種類が存在し、さらに、数十円から100円ほど高めのプレミアム版を用意しているブランドも多かったです。子ども向けの商品も含めると、著名ブランド品だけで50種類はあったでしょうか。 ここに加わって選択肢数を押し上げていたのが、1ブランドあたり1種類という取り扱いのいわゆる「ロングテール」商品でした。 著名ブランド品と違って、それぞれ豊かな個性を前面に打ち出しているいるのが特徴。箱入りで高級感を打ち出しているものが目立ちます。カタカナで書かれた、なにやら貴重なエキスを配合しているとうたっている商品もあります。普段あまり意識したことはありませんでしたが、改めて売り場を観察してみると発見が多いです。

忙しそうな店員の人々

地道な作業ですが、数えました。商品によっては2列にまたがって置いてあるものもあり、まぎらわしいです。サイズ違いは除き、確認作業も含めて4回、5回と数え直した結果、同店に置いてある歯みがき粉は103種類でした。 記者はそこまで歯みがきにこだわりがあるわけではありません。が、じっくり磨きたいので泡立ちは控えめが良いです。できれば甘さを感じるよりは、ミントなど、歯を磨いたあとにさっぱり感の残るようなフレーバーのほうが良いです。 ですが棚を見ただけでは自分の好みに該当するのがどれなのか、わかりにくいです。店員さんに聞こうにも品出しやレジ打ちで忙しそうで、声をかけにくいです。質問したところで、一つひとつの商品の違いを理解しているでしょうか。自分が客なら、面倒さが先立って、いつもと同じものを買ってしまうでしょう。 このお店だけが特別に歯みがき粉の品ぞろえが多いのでしょうか。そう考え、歩いて5分ほどの場所にある別のスーパーにも念のため足を運びました。 複数の買い物フロアがあり、衣料品なども取り扱ういわゆる総合スーパー(GMS)です。こちらもダブルチェックしながら慎重にカウントしてみました。結果は90種類。先程の食品スーパーよりは少ないですが、それでもイチ消費者の感覚としては「こんなにあっても選べないよなあ」という多さです。 念のため、記者がいつも利用しているコンビニエンスストアも改めて訪れてみます。こちらは8種類。どれも定番ブランドばかりです。自分にはこれで十分です。なんとなく、ほっとさせられる売り場でした。 歯みがき粉以外にも、今回の取材では日用品や食品など身近な生活必需品をいくつかピックアップし、店頭でカウントしています。その結果は日経ビジネスの本誌7月31日号を是非、参照していただきたいです。ひとつだけ書くならば、レトルトカレーは歯みがき粉に匹敵する選択肢の多さでした。

商品数多くても「おすすめ」があれば良い

日経ビジネスがアンケート調査で聞いたところ、買い物をしていて「選ぶのが面倒」と感じる消費者は全体の47.4%にのぼりました。2人いれば1人は選び疲れしています。60歳以上のシニア層ではその確率が38.3%にとどまったのに対し、20代で53.9%、30代で50.0%と、若い層で「面倒」と感じる人が多いという結果でした。「迷うことが増えた」と回答したのも、20代が最多で、30代が続いています。 その若い世代が当然のように利用しているのがインターネット通販です。ユーザーの属性情報や購買履歴などからおすすめ商品を教えてくれる存在。買い物で「選ぶ」という行為の負担が、実店舗よりも軽い存在ともいえます。 小売店で商品数が多いこと自体は悪くありません。多くても良いのですが、大切なのは「選ぶストレス」をいかに軽減するかでしょう。インターネット通販のようなおすすめ機能を、小売店も備えることができるか。特集「もう迷わせない! 消費多様化の終わり」ではこの課題を乗り越えようと努力するスーパーのトライアルホールディングスや、同じく奮闘するコンビニ大手のファミリーマートについても伝えています。