眼に見えないドリルで究極の穴開け加工!

参考:日経テクノロジー 2017/09/04
片山 和也=船井総合研究所 上席コンサルタント グループマネージャー(執筆協力・技術協力:微細切削加工研究所)

見えない⌀0.02mmのドリル

 前回紹介した通電検査用コンタクトプローブを検査治具として利用するためには、こうした微細径のプローブを差し込むための微細穴を開ける必要があります。

 例えば、図1は⌀0.02mmの微細穴を厚さ0.1mmのマシナブルセラミック〔フェローテックセラミックス(本社東京)の「ホトベールII-S」〕に0.05mmピッチで開ける、穴開け加工の事例です。こうした微細穴にコンタクトプローブを差し込んで並べることで、電子部品やICに対しての通電検査治具となります。

図1 ⌀0.02mmの微細穴加工の事例

図1 ⌀0.02mmの微細穴加工の事例
 材料の厚さは0.1mm、ピッチは0.05mm。        写真:中川製作所

 この微細穴を開けるためには、当然のことながら⌀0.02mmのドリルを使うわけですが、⌀0.02mmのドリルというのは肉眼ではほぼ見えません。従ってドリルをツーリングに取り付けるだけでもノウハウが求められますし、肉眼で見えない微細なドリルで穴開け加工を行うのは、まさに至難の業といえます。

 こうした微細な穴開け加工を専門としているのが、三重県四日市市に本社のある中川製作所(従業員40人)です。

微細穴開け加工を実現するための環境とは?

 同社は、スピンドルの温度管理が徹底された微細加工専用のマシニングセンターを保有しており、23℃±0.5℃に管理された恒温室の中で加工を行っています。⌀0.02mmの微細穴加工ともなれば、わずかな振動でも工具欠損など重大なトラブルにつながります。ですから微細加工専用のマシニングセンターは、振動を完全に遮断する基礎の上に設置されています。

 ワークは、加工の前日から恒温槽に入れて同一温度に保持します。まさに、微細穴加工に合わせて徹底して作り上げた環境が、中川製作所にあるのです(図2)。さらに、加工が行えても、結果を測定できないことには意味がありません。同社は微細穴の測定のために、電子顕微鏡まで設備しています。

微細加工用マシニングセンター
微細加工用マシニングセンター
スピンドルは常時温度管理されている
スピンドルは常時温度管理されている
  
振動をシャットアウトする基礎
振動をシャットアウトする基礎
23℃±0.5℃に維持された室内
23℃±0.5℃に維持された室内
測定用の電子顕微鏡
測定用の電子顕微鏡

図2 微細穴加工を実現する設備と環境
写真:中川製作所

 驚くべきことは、この環境を大手企業の開発部門や、大学など学術機関の研究室ではない、地方の中小企業がほぼ独力で築き上げているという点です。日本の受託型製造業は、そうした意味でも世界トップクラスであると筆者は思います。

 こうした微細穴は、検査治具だけに用いられるわけではありません。例えば日々小型化が進むコンデンサーなどの電子部品を、テーブルに固定するための吸着板には1/100mmオーダーの微細穴が多数開いており、裏から陰圧で空気を引くことによって、電子部品を固定させる機能を持っています。

 また、電子部品やICの製造装置において、アクチュエーターの位置決めのためのスケールとして、微細穴を同一ピッチで多数個開けるというニーズもあります。

 このように、スマートフォンやウエアラブル携帯など、さまざまなIoT機器に組み込まれる電子部品が小型化すればするほど、電子回路が緻密化すればするほど、より微細な穴開け加工が必要とされるのです。そして、こうした最先端の技術を支えているのが、地方のわずか従業員数十人の受託型製造業なのです。