たばこ規制 東京の機運を全国に

参考:朝日新聞 2017年9月12日

 他人のたばこの煙を吸わされる受動喫煙を防ぐ施策に、東京都が乗りだしました。

 小池百合子知事が、職場や飲食店など、多数の人が使う施設を原則屋内禁煙とする条例をつくると表明しました。年度内の議会提出をめざすといいます。

 焦点となる食堂や居酒屋などの飲食店については、全面禁煙(喫煙室の設置は可)としつつ、30平方メートル以下のバーやスナックに限り、すべての従業員の同意などを条件に喫煙を認めるといいます。3月に公表された厚生労働省案にほぼ沿う内容です。

 先の国会では、20年東京五輪を視野に同省が規制法案の提出を探りましたが、自民党の反対で先送りされました。国レベルの対策が進まないなか、今回の都独自の取り組みを歓迎したいです。

 ただ、その中身は十分とはいえません。日本も加盟する世界保健機関(WHO)の「たばこ規制枠組み条約」の指針が求めるのは、公共施設での「屋内全面禁煙」です。喫煙室を設置しても漏れ出る煙で受動喫煙はゼロにはならないし、雇い主に向かって「客にたばこを吸ってほしくない」と、はっきり言えない従業員もいることでしょう。

 公募中の都民の意見も踏まえ、条例案提出までに都庁内の検討をさらに深めてほしいです。

 これとは別に、都民ファーストの会と公明党は「子どもを受動喫煙から守る条例案」を今月始まる都議会に出す予定です。

 条例案では、18歳未満に受動喫煙をさせないよう努めることを「都民の責務」と定めます。子どもが乗っている自動車内でたばこを吸ってはならないとし、家庭で子どもと同じ部屋で喫煙しないことを努力義務として課します。罰則規定は盛りこみません。

 子どもの受動喫煙をなくすという目的をかかげ、都議たちが条例案を提出しようとする試みは評価します。都民の意識を高める効果は大きいでしょう。

 ただ、喫煙自体は違法な行為ではありません。私的な領域に公権力はどこまで口を出してよいのか、相互監視の風潮を生まないかなどの疑問や不安もあります。

 都議会の審議では論点を洗い出し、条文の内容や制定後の運用のあり方などについて、議論を尽くす必要があります。

 たばこ規制は、五輪が開かれる東京だけやればよい話ではありません。自民党内でも「望まない受動喫煙をなくす」という基本方針では合意が得られているといいます。ですが、今月下旬に始まるとみられる臨時国会に向けた具体的な動きは見えません。

 ここは一気に、全国レベルで対策を進めるべき時です。