歯科医院内でのレントゲン撮影のスイッチ問題

参考:Dentwave 2017/09/20

医療放射線への問題:歯科医院内でのレントゲン撮影のスイッチ問題

 9月15日の朝日新聞記事が歯科に投じる懸念。『X線 無資格操作10年』という見出しの記事。千葉・佐倉市の病院で、整形手術時に、放射線を扱う資格がない臨床工学師士が医師の指示でX線装置を操作していたというものです。

 「X線画像で確認しながら行う背骨などの手術でX線放射装置を操作する際、執刀医が足元のスイッチを押せない場合などに、臨床工学士が押していた事例があった」という病院の説明が記事になっています。診療放射線技師法では医師・歯科医師または、診療放射線技師しか操作できないと定めています。指示した医師のコメントは「法令違反の認識はあったが、医師の手が足りない中で一部の操作だということで慣習になってしまった」。

 歯科の分野でもX線放射線装置による撮影が人体への影響を心配する声がありますが、歯科の各専門学会などからは「心配は不要で、そのための最善の注意・指導は徹底している」とする共通認識があるところです。実際、臨床での歯科用CTやX線撮影は、歯の状態や歯の周囲の骨の状態を詳細に知るために重要な役割があり不可欠です。被爆の数字を出し比較すると、歯科口内法(デンタル)撮影0.01ミリシーベルト、歯科パノラマ撮影0.03ミリシーベルト、胸のX線集団検診0.05ミリシーベルト、歯科用CT0.1ミリシーベルト、PET検査2.2ミリシーベルト、医科用CT検診6.9ミリシーベルト。100ミリシーベルト以下ではガンの過剰発生がみられないとされており、そもそも歯科治療時に撮影される放射線は極めて少ないことが一目瞭然です。

 それでも、患者の中には被曝量に懸念を抱いている人もいるのも事実です。また、その撮影をする際にその装置のスイッチは誰が押しているのでしょうか。当然ながら歯科医師が押していることになっていますが、厳密に問われると問題がクローズアップされる懸念がありそうです。

 9月19日、電話取材で某元県歯科医師会役員に聞くと、「その記事は知らなかったが、歯科に当てはめると確かに問題があるのも事実。その点について業者に言われた。“先生だけですね、自分でスイッチ押しているのは。他の歯科医院は歯科衛生士がやってますよ”。これは本論でいうとダメ。患者に問題が出てないから黙認されるという問題ではない」と懸念します。

 一方で、「この記事ではないが、“法令違反の認識はあったが、一部の操作だということで慣習になっている”という感覚はあると思う。歯科は問題になることがないからという黙認した共通認識が浸透している」と臨床現場の感覚には理解できる面もあるとする元都歯役員のコメントもありました。

 厚労省歯科保健課は「法令で明記してありダメです。医師・歯科医師、診療放射技師しか操作はできませんので、指摘されたことはないと思っています、信じています」と明確に指摘しました。一部の「歯科衛生士の業務にある診療補助と捉えることも可能でないか」という解釈に対しては「診療補助は、診療をするにあたり準備などを指している。スイッチを押す行為は診療の一環と解されるのでダメです。懸念される現状に関する情報は、歯科保健課に来てません。いずれにしても法律・法令など遵守すべきものは遵守するのが大原則です」とコメントしていました。

 厚労省では「医療放射線の適正管理に関する検討会」が開催され、「医療被ばくの適正管理のあり方」「放射線医薬品を投与された患者の退出基準等」などの議論が活発に進められていくとされています。歯科医療も医療放射線の適正管理について関与はゼロでなく、今後の議論の動向が注目されます。

 感染問題がクローズアップされている昨今、社会の医療を見る目が敏感になってきている時代趨勢から、医科・歯科の医療機関の当事者の問題意識が問われています。今後、歯科は法令に従い粛々と診療に取り組んでいる姿勢が、社会からの評価を得ていくことになります。