「2018年度の改革は“惑星直列”」、迫井厚労省医療課長

参考:2017年10月6日(金)配信 橋本佳子(m3.com編集長)

日医・社会保険指導者講習会、かかりつけ医にも期待

 厚生労働省保険局医療課長の迫井正深氏は10月5日、日本医師会の社会保険指導者講習会で「2018年度診療報酬改定に向けて」をテーマに講演、「日本型少子高齢化社会」が到来しているとし、「私たちは、いかに激動の時代に生きているかという問題意識を持つことが必要」と強調しました。2018年度には、診療報酬と介護報酬の同時改定だけでなく、第7次医療計画と第7期介護保険事業計画などもスタートすることを踏まえ、「私たちは“惑星直列”と呼んでいるが、さまざまな施策がシンクロし、大きな改革が進む」と述べ、改革の前提となる「医療を取り巻く状況・課題」についての理解と改革への対応を求めました。

厚生労働省保険局医療課長の迫井正深氏
厚生労働省保険局医療課長の迫井正深氏

 「日本型少子高齢化社会」とは、少子高齢化が急速に進み、かつ地域によってその現状や変化のスピードが異なることを指します。疾病構造や医療ニーズも大きく変化することから、迫井課長は、入院医療体制を転換する必要性を強調。さらに今後は「生活の視点が医療に求められる」とし、その中心的な役割を果たす、かかりつけ医には、疾病の治療だけでなく、予防や在宅療養まで幅広く対応するよう要請しました。

 迫井課長は、2018年度改定の前提としてまず「医療を取り巻く状況・課題」として3つを挙げ、それぞれに対して「具体的な検討課題の例」を挙げました。

「医療を取り巻く状況・課題」と「具体的な検討課題の例」

1.日本型少子高齢化社会の到来
 マクロの急速な少子高齢化と人口減少の進展/地域で異なる変化の大きさとスピード/社会資源(マンパワー・財政)の相対的抑制トレンド
⇒(検討課題例)構造改革(体制転換)の推進
  7対1入院基本料病棟をはじめとした急性期~回復期入院医療体制のあり方/療養病床のあり方
2.ケアニーズの変化と多様性
 疾病構造の変化(感染症から生活習慣病へ)/世帯構成とライフスタイルの変化/加齢に伴う自立度の変化とケアの多様性への対応
⇒(検討課題例)“生活視点”の医療への導入
  かかりつけ医機能の充実/在宅医療の推進
3.技術革新と保険制度の調和
 高い効果で高額な技術の台頭/ICT、ビッグデータ、AI(人工知能)で生産性向上への期待/医療の質と国民負担軽減の両立を目指す
⇒(検討課題例)イノベーションの適切な評価・導入
 遠隔診療の推進/薬価の抜本改革/費用対効果評価の導入

 迫井課長が「1.日本型少子高齢化社会の到来」で強調したのは、人口構成の変化と地域格差。日本全体で見れば、「第1段階:2040年まで:老年人口増加、生産・年少人口減少」、「第2段階:2060年まで:老年人口維持・微減、生産・年少人口減少」、「第3段階:老年人口減少、生産・年少人口減少」です。しかし、地域差が大きく、東京都区部などの都市部は「第1段階」ですが、過疎地域は既に「第3段階」になります。「これほど人口構成が変化するスピードと振れ幅が違うことを念頭に置く必要がある」(迫井課長)。

 「2.ケアニーズの変化と多様性」では、「予防が可能で、医療が適切に介入でき、要介護状態になる最大の要因」であることから、生活習慣病対策の重要性を強調、遠隔診療で効率的に管理できる可能性が高いとしました。

 「3.技術革新と保険制度の調和」では、オプジーボを例に挙げ、「化学合成品の代わりにバイオ医薬品が増え、高額でよく効く薬が出てきてる」とし、その対応が求められるとしたほか、ICTやAIについては「かなり近い将来、医療にどんどん入ってくることが予想される中、医療がどう対応していくかが問われている」(迫井課長)。

高齢化でも悪性腫瘍患者はさほど増加せず

 (検討課題例)の「構造改革(体制転換)の推進」を説明する際に、「なかなかベッドが埋まらないという話は、都市部でも、地域でも聞く」として、迫井課長が提示したのが入院患者の将来推計。人口の高齢化に伴い、悪性腫瘍の増加が想定されますが、2005年を起点とすると、今後大幅に増加するのは、肺炎、心疾患、脳血管障害であり、悪性腫瘍の患者はそれほどには増えません。7対1入院基本料病棟の入院患者の約25%は悪性腫瘍の患者が占めるため、病床が埋まりにくくなることが想定されます。

(2017年3月15日の中医協総会資料)
(2017年3月15日の中医協総会資料)

 「入院医療の在り方は、大きく構造を変更していかなければならない。そのためには診療報酬がどうあるべきか」と迫井課長は問いかけ、7対1入院基本料病棟の半数強は、国公立・公的病院であることから、「議会の手続きなどに時間がかかるため、早め早めに対応していかないと、地域のニーズの変化についていけないのではないか」と述べました。

かかりつけ医機能、幅広く

 (検討課題例)の「“生活視点”の医療への導入」として挙げたのが、かかりつけ医機能の充実と在宅医療の推進。かかりつけ医機能のイメージとして(1)日常的な医学管理と重症化予防、(2)専門医療機関等との連携、(3)在宅療養支援、介護との連携――の3つを提示。かかりつけ医に対する患者、国民のニーズも高いことを踏まえ、今は、(2)が中心であることから、(1)や(3)への対応も必要だとしました。在宅医療についても、在宅療養支援診療所だけでは対応しきれない現状があり、「一般診療所も無理のない形で在宅医療に参加してもらいたい」と求めました。

 

(2017年2月22日の中医協総会資料)
(2017年2月22日の中医協総会資料)

 (検討課題例)の「イノベーションの適切な評価・導入」の中で説明した一つが、遠隔診療。「遠隔画像診断は、医師と医師の間で行うものですが、世間で関心が高いのは、医師と患者との間で行う遠隔診療」であると迫井課長は述べ、「基本は対面診療だが、遠隔診療は今から間違いなく進む技術であり、関係者の理解を得ながら進めていく」との方針を示しました。