救急医は見た! 餅だけじゃない冬の危険

参考:日経メディカル 2018/1/11 薬師寺 泰匡(岸和田徳洲会病院救命救急センター)

 餅の窒息ということで、年末から消費者庁が注意喚起をしていました。実は当院、今年は餅による窒息は診ておりません。これは注意喚起が功を奏したということなのでしょうか。しかし、東京では新年早々に東京消防庁が餅窒息で15人搬送し、2人が死亡したと報じられています。

餅でのど詰まらせ15人搬送 東京消防庁が注意呼びかけ
 東京消防庁は1日夜、元日に餅をのどに詰まらせ、15人が救急搬送されたと発表した。うち2人が死亡し、7人が心肺停止や意識不明の重体という。
(朝日新聞デジタル 2018年01月01日 22時28分)

 大変残念ですが、これは注意喚起しつつ見守って行くしかないのかもしれません。東京消防庁によると、毎年餅窒息患者さんがいるものの、年々少しずつ減っているようなグラフもありますので、勇気を出して今後も情報共有していくとともに、搬送されてしまった場合には救命できるように頑張りたいと思います。

図1 餅などをのどに詰まらせて救急搬送された人数(出典:東京消防庁『年末年始の救急事故をなくそう』)
図1 餅などをのどに詰まらせて救急搬送された人数(出典:東京消防庁『年末年始の救急事故をなくそう』)

餅以外で興味深かった冬の救急

 今年は、前述の通り餅による窒息や、以前このコラムで書いた餅の腸閉塞の方は見なかったのですが、低体温症の方が多くいらっしゃいました。自宅で暖房をつけずに寝ていて意識障害、トイレで倒れているところを発見、公園で寝ているところを発見、路上で寝ているところを発見――。様々なパターンがありますが、路上で寝るのはこの季節本当にマズイです。

 マツコ・デラックスが出ている月曜から夜遅くまで起きていると見られるテレビ番組に、よく路上で寝ている人が出てきます。明け方まで飲んでそのまま寝てしまうという人たちです。これがやばいのです。熱中症予防には水分補給を勧められますが、低体温も同様です。血液こそが体の熱を末梢まで伝導してくれるわけなので、足りなければ体温調節しにくくなります。

 したがって、お酒を飲んだ直後など、脱水状態で寒冷環境の中寝るのは自殺行為です。何かと飲み会も増える年末年始ですし、昨今は独居の高齢者も増えてきました。今後は低体温症の啓発もされて行ってほしいなと思います。

低体温の特徴

 低体温症の救急搬送をする場合はおそらく救命救急センターかそれに準じた施設に搬送されるでしょうから、そういった場所で働いている人以外はあまり診ないかもしれません。今回の締めくくりに、低体温に特徴的な所見を2つ紹介しておきます。

図2 低体温の心電図に特徴的な「J波」(出典:Wikipedia『J wave 』)
図2 低体温の心電図に特徴的な「J波」(出典:Wikipedia『J wave 』)

 1つ目は「J波」。オズボーン波とも呼ばれます。QRSに続いて、もう一つ山を形成するものです(図2)。これが出たから低体温だとか、低体温だと必ずこれが出るとかいうわけではありませんが(体温32℃以下でも半数以下にしか見られない)、病状を反映するとされており、復温によって消失するのをよく経験します。

 もう1つはエコー所見。知る人ぞ知るスローモーション心臓です。体温が下がるにつれ、どんどん徐脈になるのですが、低体温の場合はちょっと通常の徐脈とは異なっており、脈拍数が落ちるだけでなく、心臓の拍動のスピードまで落ちます。この時心エコーを当てると、ゆっくりとウェーブする心筋が見えます。体温25℃くらいになると、ちょっとした刺激でも心室細動を誘発することがあり神経質になります。この動きを超音波で実際に見ると、余計にビビります。海外のサイトですが、動画を公開していたので紹介しておきます。

 忘年会と思ったらもう新年会シーズンになります。皆様ぜひお気をつけて楽しんでください。そして今年一年もまた頑張りましょう!

Dr.堤より
幼児期からの食育での、噛むことの大切さ、口呼吸による、ゼツ位置の低下とゼツ筋力の低下が起こす上部、中部の咽頭部での嚥下反射力の低下と、毛細血管脳梗塞タイプの嚥下反射の麻痺など、嚥下に関しては、かなりオーラルフレイルが影響している。日常の、全身の運動での頭位置の改善、姿勢の改善などやカラオケなどのボイストレーニングも効果的だ。これらの健康志向がお年寄りに普及してきている証しでしょう。