「自分の印象を良くする」10のポイント

参考:日経BizGate 2018/1/26

 西郷隆盛が、明治維新の立役者として活躍できたのは「男ぶりが良かった」(家近良樹・大阪経済大客員教授)点も大きく貢献していたようです。敵方の幕臣だった渋沢栄一さえ「愛嬌(あいきょう)のある柔和な容貌だったが、一度意を決した時は獅子のごとく威厳があった」と好意的に証言しています。現代でも、まず相手に好印象を持ってもらうのは基本中の基本。「2秒で自分を伝える!」(日本経済新聞出版社)を著した平野佳氏はニューヨークと東京を拠点にブランド開発などを手掛けるクリエイティブ・コーディネーターで、国際ビジネスの現場に何度も立ち会ってきました。自分自身を分かりやすく相手に印象づけるノウハウを教えてもらいました。

「好印象」の基本は正しい姿勢と清潔感

平野桂氏はブランド開発などを手掛けるクリエイティブ・コーディネーター(写真撮影:Michika Mochizuki)
平野桂氏はブランド開発などを手掛けるクリエイティブ・コーディネーター(写真撮影:Michika Mochizuki)

 第一に注意すべきは姿勢です。「20~30歳代から意識していないと後々困ることになる」と平野氏は強調します。上から頭を引っ張られているつもりで背筋を伸ばし、肩を後ろへ引いて左右の肩甲骨をぐっと近づけ、腹筋の力を抜くのがコツ。若々しく見え、肯定的、前抜きに生きている印象が出てくるといいます。

 正しい姿勢へのポイントは背筋でなく体幹。しかし大げさにエクササイズに励まなくとも、気付くたびに背筋を伸ばし腹筋を意識するだけでいいです。平野氏は「パソコンの画面に『姿勢』と張っておき、目に入るたびに背筋を伸ばすだけでも効果が期待できる」としています。

 清潔感も劣らず重要です。清潔感がないとすべてがダメになります。毎日入浴して下着を取り替えているだけではまだスタートラインにも立っていないといいます。汗は美しくかくべし。「会社には替えのシャツ1枚とパウダーをロッカーに置いておきたい」と平野氏。1980年代後半のハリウッド映画「ワーキングガール」には、自分のオフィスでハリソン・フォードがさっとワイシャツを替えるシーンが出てくるといいます。平野氏は「ワイシャツはもともと下着という扱い。大事な商談や会議の前に替えられればベスト」とアドバイスします。

声は変えられる。1度はボイストレーニングを

「2秒で自分を伝える!」(日本経済出版社)はコミュニケーションの重要さを具体的に説く
「2秒で自分を伝える!」(日本経済出版社)はコミュニケーションの重要さを具体的に説く

 「清潔第一は当然だが体臭を消しすぎない軽やかな香りは残したい」と平野氏。次に取り組むべきはコロンの使い方になります。フランスではがんがん香水を振りかけますが、乾燥していて匂いが広がりにくいという地理的条件も関係しています。湿気の多い日本では応用しにくいです。

 平野氏のお勧めはコロンを空中にスプレーし、その下をさっと通る付け方。「誰かが何となく良い匂いをさせている程度でいい」(平野氏)。手首にさっと付ける方法もあります。動脈の通っている部分ならば体温で香りがあがってきます。好きな匂いのコロンならば自分自身へのセラピー効果も期待できるといいます。

 4番目に取り組むべきは「声」。自分がどんな声音で話しているか通常は意識しづらいですが他人の声は案外耳に残りやすいです。「一度はボイストレーニングを受けるべき」というのが平野氏の指摘です。人間が発声できる音域は結構広いです。平野氏自身は40歳代にオペラ声楽家の訓練を受け「声の印象は変えられる」と確信を持ったそうです。

 ボイストレーニングは1回5000円から1万円くらいの費用で受けられるといいます。声帯に負担をかけずに腹から出す発声方法を学べば1時間のスピーチでも声が枯れないでしゃべれるといいます。「声は喉ではなくお腹から」(平野氏)

 女性は男性のどこを見ているでしょうか。まず「手」だと平野氏は言いきります。衣服をまとわずに人前にさらされているのは顔と手だけ。手は裸の一部だという考え、5番目に注意を払うべきは手元。髪と爪をきれいにしていれば、かなり手がかかっているように見えると平野氏。日本でも講演を行う前にネイルサロンで手入れするケースを見かけるといいます。

女性がチェックするのは手元・足元

 手元を見られていればその延長線も当然チェックされています。6番目のチェックポイントは財布です。管理職ともなれば接待や若いスタッフのためにご馳走(ちそう)する機会はたびたび訪れるでしょう。しかし「ごちそうさまでした」と挨拶(あいさつ)する若手の視線は財布に向いています。特にテーブルで支払いを済ませるケースなどは皆が観察できる機会に恵まれるわけです。平野氏は「年に1回は取り換えたい」としています。

平野氏は国際ビジネスの現場をチェックしてきた(ニューヨーク市で。写真撮影:同)
平野氏は国際ビジネスの現場をチェックしてきた(ニューヨーク市で。写真撮影:同)

 新春に新調する「春財布」は「張る」に通じて、財布の中がお金で一杯に張り縁起が良いとされています。この時期に財布を買い替えるビジネスパーソンは少なくありません。しかし領収書などでパンパンに太鼓腹のように膨らんだ財布はどうにも格好悪いです。この点にも気を配りたいところです。

 手元が見られているのと同様に足元も見られています。第7の注意ポイントです。自分に合った靴を見つけるために一度はシューフィッターのいる靴店を訪れるべきでしょう。シューフィッターはお客の脚の健康も視野に入れながら合った靴を探してくれる相談者です。「シューフィッティングにはついでに寄るのではなく、1時間をかけてじっくり」と平野氏。

 8番目のポイントとして靴下にも注意を。本人には見えず他人からは最も見られている部分のひとつだといいます。(1)いすに腰掛ける時(2)料亭での会食で靴を脱ぐとき――など値踏みされる機会は少なくありません。平野氏は高価でなくとも清潔で気に入った靴下をつけておくべきと注意を促しています。

「とぼけられる男」のポイントの高さ

 9番目のポイントはバッグ。男性が荷物を持たずに歩くのはさっそうと歩く姿は見ていて気持ちいいですが、スマホや財布でポケットが膨らみスーツのシルエットが崩れるのは避けたいです。平野氏は(1)ジャケット着用時にショルダーバッグは使用しない。しわが寄って左右のバランスが崩れる(2)バッグもファッションのひとつ。スーツやシャツなどとの組み合わせを考えて選択を(3)バッグ自慢はしない――と指摘しています。

 最後のポイントは外見ではなく、自分を一枚上に見せる人間関係でのアドバイスです。「とぼけられる男が貴重に見られる時代」だと平野氏は強調します。情報が氾濫している現代だからこそ「それを知っている」と連呼するのではなく、自分の隙を見せてとぼけて見せられる男の方が好印象を与えるといいます。

 具体的に「自分を伝える」理想のモデルは誰かいないのでしょうか。平野氏はマイケル・ブルームバーグ元ニューヨーク市長と山中伸弥京大教授・iPS細胞研究所所長のふたりを挙げます。「ブルームバーグ氏のソツない着こなしは、きっちりと調整されたフィット感が素晴らしく、非常に魅力的な印象を受けた」と平野氏。

 一方の山中教授は「自分の研究を素人にもわかるように語りかけている姿勢に本当の知性を感じる思い」といいます。平野氏は「お洒落で清潔感にあふれている。それこそが『スタイル』というものだなと思う」としています。

(聞き手は松本治人)