歯科のAI診断支援システム、阪大とNECが挑む

参考:日経デジタルヘルス 2018/2/22 伊藤 瑳恵=日経デジタルヘルス

「ソーシャル・スマートデンタルホスピタル」が始動

 「ソーシャル・スマートデンタルホスピタル(S2DH)」。そんな構想が始動します。大阪大学 歯学部附属病院と大阪大学 サイバーメディアセンター、NECは2018年2月20日に記者会見を開催し、構想の内容を発表しました。

「ソーシャル・スマートデンタルホスピタル」概要(プレスリリースより) クリックすると拡大した画像が開きます
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大阪大学 歯学部附属病院 病院長の村上伸也氏 クリックすると拡大した画像が開きます
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 S2DHは、大阪大学で開発したAI技術とNECが構築するクラウドサービス基盤を活用して、歯科診療情報を有効活用するためのプロジェクトです。大阪大学 歯学部附属病院には、日々2000人の患者が訪れ、膨大な歯科診療情報が蓄積されています。この情報を「適切に活用したいと考えたことからS2DHが始まった」と大阪大学 歯学部附属病院 病院長の村上伸也氏は話します。

 歯科診療情報の活用として、まずはAIを活用した診断支援システムの開発を試みます。既に医学系では、AIを活用した診断支援システムの研究が盛んに行われていますが、歯科領域においてこれほど大規模な研究は国内初だといいます。

成果は阪大を”ハブ”に地域・海外へ展開

臨床現場で得られる各種データとAI活用の未来イメージ クリックすると拡大した画像が開きます
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 S2DH構想の実現性を確かめるために、大阪大学 歯学部附属病院では先行して2017年4月から3つの診断支援システムに関する研究を進めています。それぞれ、(1)矯正歯科、(2)舌粘膜病変、(3)歯の喪失、に関するシステムです。

 (1)の矯正歯科は、口腔内や顔貌の情報を使ってAIで検査や診断、治療方針の支援を行うシステムです。これまでは専門医がアナログで行っていた工程をAIで支援することで、「医師にしかできない外科的な治療を行うことに一層注力できる」(村上氏)ことを狙います。

 (2)の舌粘膜病変は、検査画像と確定診断の結果をAIに学習させることで粘膜組織病変の良悪性を判定する診断支援システムです。がんや前がん病変、口内炎などを自動的にスクリーニングすることで見落としを防止する。現時点で病変の検知は高精度に行うことができており、今後は「グレーな症例をいかに正確に判断できるようにするか研究を進めていきたい」と村上氏は話します。

 (3)の歯の喪失に関しては、長く来院している患者の口腔内データを使って、今後何年以内にどの歯を失う可能性があるか予測するシミュレーターを開発しています。数千人の口腔内歯列情報を学習させており、歯を失いやすい患者を早期に判定することを狙います。

(左)大阪大学 サイバーメディアセンター センター長の下條真司氏、(中央)大阪大学 歯学部附属病院 病院長の村上伸也氏、(右)NEC システムプラットフォーム研究所長の中村祐一氏 クリックすると拡大した画像が開きます
(左)大阪大学 サイバーメディアセンター センター長の下條真司氏、(中央)大阪大学 歯学部附属病院 病院長の村上伸也氏、(右)NEC システムプラットフォーム研究所長の中村祐一氏 クリックすると拡大した画像が開きます

 これらの研究は、数年以内の実用化を目指しています。2018年度以降も院内で新たなテーマを設定し、研究を進めていきたい考えです。さらに、これらの成果は大阪大学 歯学部附属病院を“ハブ”として、地域の医療機関や海外へ展開することも視野に入れており、地域の医師も巻き込んで裾野を広げていきたい考えです。

 

セキュリティー配慮は?

 S2DHでは、情報を安全に取り扱うことにも気を配っています。今回取り扱う歯科診療情報は、顔の一部やその周辺を含む検査が行われるため「個人が特定される可能性が高い」(NEC システムプラットフォーム研究所長の中村祐一氏)からです。顔貌画像はそれだけで個人が特定される可能性があり、歯型は身元確認などにも使われ、カルテ情報と合わせれば簡単に個人を特定することができます。

歯科診療情報の一例 クリックすると拡大した画像が開きます
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 そこで今回は、ネットワーク経路やハードウエアデバイス、メモリーデータ、システム占有時間などを安全に分割する仕組みを整備し、それらを統合管理するソフトウエアを開発します。これによってデータの秘匿度に応じてセキュリティーレベルを設定し、医療データを迅速に処理することが可能になるといいます。