スマホで診察、本格化 症状安定した患者対象 国の解禁追い風に 「暮らしアイ」

参考:2018年3月5日(月)配信 共同通信社

 診療所に足を運ばなくてもスマートフォンなどの画面上で、医師の診察を受けられるオンライン診療が普及してきました。2015年に国が情報通信機器を使った遠隔での診療を全面解禁にしたことを追い風に、スマホなどの普及に伴い、症状が安定している患者向けに導入する医師が増加中です。待ち時間をなくせるほか、通院が難しい患者も診察を受けやすくなります。4月から医療機関に対し新たな報酬が設けられるため、普及に弾みがつきそうです。

 東京都葛飾区のハートクリニック。「調子はどうですか」。佐藤一樹(さとう・かずき)医師がパソコン画面に映し出された患者の北村尚美(きたむら・なおみ)さん(61)に話し掛けました。高血圧で治療中の北村さんが自宅で測った血圧表を見せると、「安定しているし、順調ですね」と佐藤医師が応じました。

 北村さんは昨年11月から2回に1回のペースでスマホを使った診療を受けています。予約時間になると通知され、画面に映った佐藤医師の診察が始まる仕組みです。「画面を通しても違和感はない。仕事や母親の介護もあり、通院時間を省けて助かる」と北村さん。

 佐藤医師は昨年から症状の安定した患者を対象に、オンライン診療を開始。「自覚症状がない場合、自己判断で薬をやめ、症状が悪化する場合がある。患者さんの治療が中断するのを防ぎたい」。インフルエンザなど感染症の流行期には「通院による感染リスクを避けるといったメリットもある」と佐藤医師は言います。

 外出が困難な患者の診療の機会を増やす期待もあります。新六本木クリニックの来田誠(きだ・まこと)院長は「家に引きこもっている患者、電車に乗れないといったパニック障害などの症状がある人の治療にも向いている」と話します。

 オンライン診療のアプリ事業を展開するメドレー(東京)によると、対応できる分野は幅広いです。主には高血圧、糖尿病などの生活習慣病、うつ病などの精神疾患、花粉症や睡眠時無呼吸症候群、ピルの処方などです。在宅診療で医師が簡単に訪問できない地域でも普及が期待され、導入した医療機関はここ1年ほどで急増中です。

 厚生労働省によると、在宅療養支援のためにオンライン診療を取り入れている医療施設は14年時点で約560施設、延べ約1万6千人の患者が利用しています。4月からは一定の条件を満たした場合、新たに診療報酬が支払われるようになるため、全国で導入が進むとみられています。

 ただ、オンライン診療に詳しい京都府立医大特任助教の加藤浩晃(かとう・ひろあき)医師は「多くの患者を効率よく診察するために導入したり、遠く離れた地域の患者を集めたりするのは本来の目的ではない」とくぎを刺します。国も診療のためのガイドラインを策定し、トラブルを防ぎたい考えです。

 加藤医師は「今後普及するのは間違いない。患者にメリットがあるとされる遠隔診療だが、対面の診療に比べて情報が少なくなるため、あくまでも診療を補完するための位置付けといった認識が必要」と指摘しています。

 ※オンライン診療

 パソコン、スマートフォンなど情報通信機器を使い、対面ではなく、画面を使った方法で、離れた場所にいる患者を医師が診察する診療。1997年にへき地や離島などを前提に認められ、2015年には、一般診療でも認められるようになりました。厚生労働省によると、対面での診療が基本だが、患者の状況に応じ、医師の判断で、オンライン診療の頻度などを決めることができます。