「酒は百薬の長」を否定する結果

参考:Journal of Studies on Alcohol and Drugs 3月号掲載

オーストラリア国立薬物研究所のTanya Chikritzhs氏らによると、87件の研究をレビューした結果、全く飲酒をしない人に比べて、適量の飲酒をする人に生存期間の面で利益は認められなかったといいます。一方、この結果に対して米ボストン大学医学部教授のR. Curtis Ellison氏は、「科学的データからは、少量から中等量の定期的な飲酒が中高年の健康的なライフスタイルと矛盾しないことが支持され続けている」とコメントしています。  Chikritzhs氏らは、「飲酒を止めた人は、理由として病気になったことを挙げることが多いが、これまでのレビューではその点が見逃されてきた。その結果、こうした人は早期に死亡する比率が高く、飲酒の影響を見誤る原因となっている可能性がある」と主張しています。  今回のレビューでは87件の研究について検討し、病気による禁酒を考慮していない研究を除外したところ、適量の飲酒による寿命への利益は認められなかったといいます。また、飲酒する人のなかで最も結果が良好であったのは、実は“時折(10日前後につき1杯未満)”酒を飲む人でした。  さらに、「中高年者の少量から中等量の飲酒は、良好な健康状態であることの指標であって、原因ではない可能性が高いことが明らかになってきている」とChikritzhs氏は話します。アルコールを楽しむのはよいが、酒を薬のように考えるのは間違っており、「過剰に摂取すれば依存症や有害な影響があることを考えると、ほとんどの人にとっては、健康のためには飲酒量は少ないほどよい」と同氏は付け加えています。  Ellison氏は、今回のレビューはこの分野における膨大な研究を否定するものではないとし、「ヒトや動物の実験で、少量の飲酒(特にワイン)がアテローム性動脈硬化症や冠動脈疾患のリスク低減と関連することが示されている」と指摘しています。トロント大学(カナダ)ダラ・ラナ公衆衛生学部教授のJurgen Rehm 氏は、実験でアルコールの有益な効果が示されていることを認める一方で、飲酒をすれば乳がんなどの一部の疾患リスクが上昇し、効果が相殺される可能性もあると述べています。
Dr.堤より これまでの研究では飲酒のさまざまな健康効果が示唆されてきたが、今回、適量(moderate)のアルコールが寿命を延ばすという見解に疑問を呈する研究結果が新たに示された。“時折(10日前後につき1杯未満)”酒を飲むが最も健康?