Lesson306

豪でたばこ箱の宣伝一掃 世界初
 


豪でたばこ箱の宣伝一掃 世界初、業界は抵抗

人間は、依存してそれに溺れる人もでてくる、また健康被害も大きいのであれば
規制することも必要。しかし既存業界は大変だろう?こういうものは影の部分として社会の表から葬るというのも

これからの若い人たちが触れない機会を増やすことがポイントです。


オーストラリア政府が12月に導入する「世界で最も厳しいたばこ規制」(欧米メディア)が注目されている。たばこの箱から宣伝色を一掃させる世界初の試み。世界保健機関(WHO)は他国も追随する"ドミノ効果"を期待するが、危機感を強める世界のたばこ業界は波及阻止に躍起となっている。

▽誘惑排除

「喫煙による病気で家族を失った全ての人々の勝利だ」。新制度導入の是非をめぐり、豪政府と世界の大手たばこ会社が激しく争った訴訟。豪連邦最高裁が8月、業界側の敗訴を言い渡すと、ロクソン司法長官らは高らかに勝利宣言した。

「プレーン・パッケージング(飾りのない包装)法」などに基づき、箱の包装からロゴやイメージカラー、宣伝文をなくし、「喫煙で黒ずんだ肺」などの写真や警告文を裏面の90%、表面の75%に表示することが義務づけられる。

狙いは喫煙者を誘惑するデザインの排除だ。箱の色も「喫煙者が最も魅力を感じない」という「くすんだ焦げ茶色」に統一。業界側は「貴重な商標を奪う行為で補償もない。憲法違反」と猛反発し、無効確認を求めて提訴したが、退けられた。

▽規制先進国

「箱が変わるだけで中身は一緒だけど、グロテスクな写真は気持ちが悪い」。シドニー中心部の遊歩道のベンチで、アレックス・クーパーさん(20)はたばこをくゆらせながら肩をすくめた。たばこ販売店の男性は「きっと客が減る。頭痛の種だよ」とあきらめ顔だ。

同国では酒場を含め、屋内の公共の場所で喫煙が原則として禁じられ、屋外の禁煙区域も広がる一方。2000年以降に生まれた人へのたばこ販売を一生禁じる案まで一部の州で検討され、喫煙規制の先進国といえる。

新制度実現に尽力したロクソン司法長官は地元テレビで、10歳の時、喫煙によるがんで父親を亡くしたことがやる気を後押ししたと告白している。

新規制には他国も注目し、欧州連合(EU)は導入を検討。英国は導入の可否を決める最終段階にある。フランスや中国なども関心を寄せる。

▽対決激化

「貿易障壁だ」「包装の簡素化で偽造品が出回りやすくなる」

各国の業界大手は他国が追随しないよう、あの手この手で抵抗を試みている。

米国の大手たばこ会社は新規制がオーストラリアへの投資を妨げると主張し、自社が拠点を置く香港とオーストラリアの間の投資協定に反すると賠償を要求した。

また世界貿易機関(WTO)ではウクライナ政府が貿易障壁に当たるとして紛争処理手続きを進める構え。オーストラリアとの貿易実績はほとんどなく、大手たばこ会社が背後で糸を引いているとみられている。

シドニー大のサイモン・チャップマン教授(公衆衛生)は「業界は大幅値下げに踏み切る」と予測する。販売量を増やし、新規制の効果を台無しにする作戦だ。

WTOなど国際舞台での攻防の決着には数年かかるとみられ、地元紙は「政府の勝利宣言は時期尚早」と指摘。対決は今後さらに激化しそうだ。(シドニー共同=伊藤慎司)

※オーストラリアの喫煙事情

18歳以上の喫煙率は2007〜08年時点で21%。1989〜90年の28%に比べ減少傾向にあるが、喫煙に起因する病気で毎年約1万5千人が死亡しており、政府は18年までに10%まで減らしたい考え。アボリジニなど先住民の喫煙率は5割近くと高い。喫煙規制は州によって異なるが、最も厳しいとされるタスマニア州では、職場など公共の建物内での喫煙は一切禁止。屋外でも遊歩道や子供が遊ぶ公園、飲食エリアのほか、子供が同乗した車内も禁煙。州によっては、禁煙区域での喫煙を許した管理者に最大1万4千豪ドル(約113万円)の罰金を科している。(シドニー共同)
 

2012年9月28日 提供:共同通信社