Lesson31 

背後に病気も
卵巣機能の低下など



髪の毛が薄いことを気にしている女性は意外と多い。30歳代以下の女性の場合、男性と違って薄毛の原因は様々で、背後に病気が潜んでいることもある。薄毛の原因やタイプを知り、それに応じた対策をとることが大切だ。

大正製薬が2003年に実施した調査によると、成人女性の約3割が薄毛状態に悩んでいた。特徴的なのは、その割合が35歳を境に一気に上昇することだ。

髪の毛は2−6年成長して抜けて、同じ毛穴から新しい毛が生えるサイクルをくり返す。つまり毎日、一定数が抜け変わっているわけだ。順天堂大学医学部の植木理恵助教授(皮膚科)によると、1日の抜け毛が100本以内なら正常。それ以上になると、何らかの不調でサイクルが短くなっている可能性がある。

男性の薄毛は加齢による脱毛症か、男性ホルモンが作用する男性型脱毛症がほとんど。女性でも40代半ば以降は男性と同様の加齢による脱毛症が増える。

ところがそれ以下の年令では原因は多岐にわたり、自分では判断しにくい。薄毛で皮膚科を受診し、別の病気がみつかる例もある。女性に多くみられ薄毛を伴う病気としては、甲状腺の異常や膠原病、鉄欠乏性貧血などがある。

若い女性でも、男性型脱毛症を起こすこともある。頭髪専門医院、城西クリニックの小林一広院長は「卵巣機能の低下が原因のことがある」と指摘した。卵巣機能が低下すると女性ホルモンの分泌が減り、男性ホルモンの影響が強まって脱毛が起きる。生理不順、無月経などがあれば婦人科の治療が優先だ。

出産後に体内のホルモン分泌が変化し、一時的に薄毛になるのも女性特有の現象だ。たいてい10カ月ほどで髪が生え始めるが、そのまま男性型脱毛症に移行する例もある。

ここまで挙げた薄毛に共通するのは、頭頂部がまんべんなく薄くなる症状が現れること。植木助教授は「薄毛が気になったらまず皮膚科に行って検査を受け、別の病気が潜んでいないか調べるといい」と勧める。

一方、頭皮の荒れで薄毛になる人が少なからずいるのも若年女性層の特徴。シャンプーやカラーリング、パーマ液が合わず接触性皮膚炎を起こしたり、頭皮の油分の分泌が盛んになると脂漏性皮膚炎が起きていたりする。「頭皮はストレスや食生活の影響を受けやすい」(小林院長)。仕事でストレスをためると頭皮が荒れることがある。ストレスが大きな原因とされる円形脱毛症も女性に多い。

頭皮の荒れや円形脱毛症は専用のシャンプーや塗り薬で治療する。フケ・かゆみが強く頭皮が赤い場合や、一部分だけ髪が抜けたといった場合は皮膚科に相談しよう。

頭皮の荒れが原因でない場合は、薄毛対策として育毛剤が効果的。病気でも症状が落ち着いて、使用に問題がなければ育毛剤を使える。「最も有効な成分はミノキシジル」(植木助教授)。日本では大正製薬が「リアップレディ」として発売している。毛母細胞からも発毛を促す。頭皮の血行を促進し細くなってしまっている毛を太く長く育てるタイプもある。

髪の洗い方も見直したい。季節や個人差によるが、「洗髪は2日に1回程度で十分」(植木助教授)。洗いすぎると頭皮の皮脂が奪われ毛が乾燥して切れやすくなる。毎日洗わないと気分が悪いなら、頭皮をやさしくブラッシングしてから、お湯で頭皮を洗い流すだけで汚れの7割は落ちるという。

ブラッシングは静電気が起きないよう注意しよう。イノシシの毛などを使ったブラシや静電気防止タイプを選ぶといい。

育毛に効果がある食品は様々指摘されるが、専門家は「特にひとつの食品を食べれば髪が生えるということはない」と口をそろえる。バランスよく栄養をとることが一番だ。「髪は体調の鏡」と心得れば、日ごろの生活を省みるきっかけになるだろう。

(ライター  藤原 仁美)


日本経済新聞 2006.3.18