30代女性の元気術 -運動編-

日常生活で筋肉使おう

「あの人、若くてきれいね」。そんな印象を周りの与えるのは顔の造作やウエストのくびれの有無というより、体つきや姿勢といった全体から漂う雰囲気だろう。「30代女性の元気術」の3回目に当たる今週は「運動編」。若々しい体形を維持することを考えてみたい。

まずは入浴前に薄着になり、姿見で前身をしばし眺めてみよう。腰回りではなく、見るべき点はあごや下腹の位置。首が前に出て腰が落ち、腕をだらんと下げてぼんやりと立っている女性と対面してしまったらすぐに生活を改める。

というのも、「前かがみ、寄りかかる、座るとすぐひじをつく。そして姿勢が悪い。これは老化の第1歩」(女性生活雑誌「ベーネベーネ」の稲田美穂子編集長)だからだ。姿勢が悪いのは筋力が弱まって体を支えられない証拠だという。

「姿勢を正し、そして歩く。運動は1日10分から、継続してやること」。生活習慣病の専門医院である高輪メディカルクリニック(東京・港)の久保明院長は運動の大切さを説く。例えば1週間に1−2時間の運動をしていると、全くしていない場合に比べて糖尿病が発症するリスクが10%減らせるという。

では「正しい」姿勢とは。健康運動指導士の黒田恵美子さんによると、みぞおちに手を差し込んでぐっと上に持ち上げ、頭から全身に1本軸ができる感じという。おへその少し下に力が入るのでおなかが引っ込み、自然にあごも引ける。

30代女性の運動法5カ条

第1条
常に正しい姿勢を保つ。姿勢の悪さは老化の第一歩と自覚して正す
第2条
1日1度は全身をチェック。町中でもガラスなどで姿勢を確かめよう
第3条

日常生活も常に運動。歩く時や階段を上がる時も筋肉の動きを意識する

第4条

筋肉をつけながら脂肪を燃焼させる。食事制限だけのダイエットは非効率

第5条
まずは1日10分、1週間で1時間の運動を継続すること。継続は力なり

常にこの姿勢でいるだけでも相当筋肉を使う。この状態で歩いてみよう。

このとき、足の親指の付け根で地面をけり出す。すると後ろの足は自然に腰の後ろにくるので、ヒップアップにもつながる。ヒールは高くても5センチまで。小さな歩幅でペタペタと歩いていては、いくら歩いても意味がない。階段も同じで、上がるときに足の親指で押し上げるようにすると、ふくらはぎの筋肉が伸びる。
何も激しく走り回るだけが運動ではない。時間がないなら普段の生活で筋肉を使えばいい。

例えばいすに腰掛け、体の両わきの座面に手のひらをついて腕を突っ張り、体を浮かせて少し止める。これは気になる二の腕の後ろを鍛えるのに効果的。通勤のかばんを肩掛けから手提げにして、体のやや後方に固定して持ってもいい。買い物袋も同じだ。

たるみやすいおしりを鍛えるには、足を後ろに上げるのが一番。コピーとりや台所仕事の間でもできる。

こうした動作から始め、とにかく途中でやめない。さらに1週間単位で運動量を考える。「20分運動を続けないと脂肪が燃焼しないというのはうそ。10分でもやれば効果は得られる」(久保院長)という。

もっと運動をしたい人は筋肉を太くする運動と有酸素運動を交互にするのが理想的。脂肪を落とすには燃焼させるしかなく、効率よく燃焼させるには筋肉が必要だからだ。

セントラルスポーツアカデミー本部の大石悦子さんによると、筋肉を太くするコツは動かす筋肉の位置を意識しながら、7分目の力を出すこと。腹筋なら、あおむけに寝て足も上半身も一緒に曲げると全体が刺激される。「10−15回連続してその動作を繰り返したら精いっぱい」という程度が7分目の目安になる。

女性の場合、更年期障害に対する抵抗力も運動をしている方がつくし、骨粗鬆(しょう)症などの予防にも運動は欠かせない。運動は何歳から始めてもいいが、高血圧などの病が少ない30代なら変化に富んだ運動ができる。

筋力トレーニングをすると、足や腕が太くなると思われがちだが「女性は筋肉が付きにくく、格好良く引き締まるのがやっと」(大石さん)。ご心配なく。

(2001.11.17 日本経済新聞)