刷り込みにホルモン関与 学習臨界期の解明に道
 

 生後間もないひな鳥が初めて見た相手を親とみなす「刷り込み」には、脳内での甲状腺ホルモンの働きが不可欠であることを発見したと、帝京大(東京都)や北海道大のチームが25日付の英科学誌に発表した。

 刷り込みが起こるのはふ化してから数日に限られ、その期間が過ぎると学習ができなくなる。こうした特定の発達段階は「学習臨界期」と呼ばれ、人でも言語の習得や絶対音感の獲得などに適した臨界期があるとされる。チームの本間光一(ほんま・こういち)帝京大教授は「人にも共通している可能性のあるメカニズムの究明につなげたい」と話している。

 チームは、ふ化したばかりのニワトリのひなにおもちゃの鳥を見せる訓練を行い、解剖して大脳の状態を観察。訓練が始まると、それまで体の血中にあった甲状腺ホルモンが大脳に流入し、記憶が可能になる臨界期が始まることが分かった。一方で、脳内の神経細胞と甲状腺ホルモンが結合するのを薬剤の投与で抑えると、刷り込みが起こらなかった。

 刷り込みの期間が過ぎた後でも、甲状腺ホルモンを脳に注射することでおもちゃの鳥を覚えることができるようになり、甲状腺ホルモンの作用が臨界期を決定していることが分かったという。

※英科学誌はネイチャーコミュニケーションズ


2012年9月26日 提供:共同通信社