閉経前後 健康見直す好機 骨量減少、動脈硬化進みやすく 
更年期、ストレスや性格も影響

 

閉経前後:健康見直す好機 骨量減少、動脈硬化進みやすく 更年期、ストレスや性格も影響

 「閉経を迎える時、体にどんな変化が表れるのか教えてほしい」。女性読者(54)から手紙をいただきました。「『閉経=老い』のような気がして、人には聞きづらい」とも。専門家に話を聞きました。【下桐実雅子】

 閉経とは、加齢により卵巣の働きが衰え、月経が終わることをいう。日本人が閉経を迎える平均年齢は約50歳。女性は生まれた時、卵巣に約200万個の卵子のもと(原始卵胞)を持っており、思春期以降、一定のサイクルでおよそ一つずつ排卵する。「こころとからだの元氣プラザ」(東京都千代田区)の小田瑞恵(みずえ)・診療部長(産婦人科)は「原始卵胞がなくなり、排卵できなくなるのが閉経。日本人女性の平均寿命は延びているが、閉経の年齢は昔とたいして変わらない」と説明する。ただ、喫煙者の場合、閉経年齢が早まるというデータもある。
 閉経の前には、月経の乱れが起こることが多い。「人によって異なるが、40代になり最初は周期が短くなる人が多いようです」と小田部長。その後、周期が長くなったり短くなったりと不規則な状態が続き、徐々に間隔が空くようになる。1年間月経がなければ、閉経とされる。

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 閉経前後の45〜55歳ぐらいを更年期と呼ぶ。閉経前から卵巣の機能は次第に低下し、卵胞からつくられる女性ホルモン「エストロゲン」も減少していく。ホルモンのバランスが崩れるため、不快な症状を経験する人も少なくない。症状が日常生活に支障が出るほど重い場合、更年期障害と呼ばれる。

 更年期に詳しい小山嵩夫(たかお)クリニック(同中央区)の小山嵩夫院長は「更年期の症状は女性ホルモンの急激な減少に加え、家庭や職場の人間関係やストレスなどの環境要因、本人の性格が影響する」と話し、症状の出方は個人差があるという。発汗、ほてり、頭痛や肩こりなど症状はさまざまだが、「うつ気分、疲れやすい、眠れないと訴える人も多い」。治療には漢方薬やカウンセリング、ホルモン補充療法などがある。

 閉経で女性ホルモンが分泌されなくなると、起こりやすい病気もある。骨がもろくなって骨折しやすくなる骨粗しょう症は高齢の女性に多い。骨量を保つ働きがあるエストロゲンが減るため、閉経後の10年間で骨の量が約20%減少する。
 エストロゲンには悪玉のLDLコレステロールを抑える作用もあり、閉経前後からコレステロール値が高くなる傾向がある。「動脈硬化が進みやすくなるため、食事の改善や運動が大切になる」と小山院長。このほか、膣炎(ちつえん)やもの忘れなども起こりやすいという。

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 閉経が女性の体に劇的な変化を起こすのは確かだが、一方で子宮内膜症や子宮筋腫は閉経によって改善するという。小田部長は「自分の健康や生活習慣を見直すチャンスと、前向きにとらえてください。元気な70歳、80歳のおばあちゃんになるために、人生の曲がり角を上手に曲がってほしい」とアドバイスする。病気は進んでから治すのは大変だが、活動的な50代のうちなら、運動習慣もつけやすい。また、「更年期や健康管理の相談ができる婦人科のかかりつけ医を持つことも大切」と話している。

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<思春期>(8〜18歳ごろ)卵巣が活動を始め、女性ホルモンの分泌が始まる。10歳ぐらいで最初の月経(初潮)を迎える子もいて、個人差がある。
<性成熟期前期>(18〜37歳ごろ)妊娠出産に適した時期。
<性成熟期後期>(37〜45歳ごろ)妊娠する可能性が低下し始める。
<高齢期>(55歳ごろ〜)
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 ■閉経前後の更年期を快適に過ごすコツ
・我慢をしないで休む。つらければ早めに受診
・病気予防のためにも、バランスのよい食事を
・睡眠をきちんととって生活のリズムを整える
・体を動かす(ウオーキング、ストレッチなど)
・散歩や買い物、旅行など積極的に外に出る
・相談できる友達を持つ
・自分のために楽しむ時間を持つ
・定期的に健康診断を受けて自分の体を知る

 *小田部長への取材を基に作成
 *日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会の女性の健康週間委員会が監修した「女性の医学大全科」(主婦の友社)も参考になる。

2013年1月30日 提供:毎日新聞社