中国で鳥インフルエンザ(H7N9型)の感染者が相次ぎ、2人が死亡、5人が重体になっている問題で、このウイルスの遺伝子が人に感染しやすく変異していることが、国立感染症研究所の分析でわかった。
同研究所では、中国当局から先月31日に、最初に感染が確認された上海市の男性2人、安徽省の女性1人から検出したウイルスの遺伝子情報の提供を受け、分析していた。上海市と安徽省のウイルスの遺伝子配列はほとんど同じだったといい、感染が広がっている可能性もあるという。
H7N9型のインフルエンザウイルスは毒性が弱いとされているが、分析に当たった同研究所の田代真人・インフルエンザウイルス研究センター長は「ウイルスの性質が変わっている可能性や、免疫を持っている人がいないために重症化している可能性も考えられる。ウイルスが人に感染しやすくなっていることが確認されたので、人から人への感染が起きていないか、監視を強化する必要がある」と指摘している。
強毒型に変異か 人から人に感染の恐れも 中国の鳥インフル
【上海共同】中国国内で人への感染が確認された鳥インフルエンザウイルス(H7N9型)について、遺伝子解析などの結果、本来の弱毒性ではなく、発症すると重い症状が出やすい強毒性の可能性が高いと専門家が分析していることが3日、分かった。関係筋が明らかにした。
ジュネーブに本部がある世界保健機関(WHO)は今のところ「人から人への感染例は見つかっていない」としている。しかし専門家は、ウイルスが人から人への感染の恐れがあるタイプに変異している可能性が高いと分析しており、変異が確認されれば感染が拡大する恐れもあるため中国の保健当局と協力し、事態を注視していく方針だ。
WHOはH7N9型の人への感染は初めてと確認。これまでの調査では豚からの感染も疑われているが、上海市の川で3月に見つかった大量の豚の死骸との関係は不明で、感染源は特定されていない。
H7N9型は本来、弱毒性で公衆衛生上のリスクは低いとされている。ただ中国国内で確認された感染例はいずれも症状が重篤で、遺伝子解析を行った結果、感染した人体内で見つかったウイルスは強毒なことが分かった。
国立感染症研究所の田代真人(たしろ・まさと)インフルエンザウイルス研究センター長は3日、H7N9型は「遺伝子に変異があり、人に感染しやすくなっている可能性がある」との見方を示した。遺伝子配列を分析した田代氏は「軽症の患者や症状の出ない不顕性感染者がいるのか、注視していく必要がある」と話した。
H7N9型により上海市の男性2人が死亡。江蘇省と安徽省の計5人が重体で入院中。中国の保健当局は、強毒化の程度などを調べるため、入院患者から検出したウイルスの検査をさらに進めているもようだ。
また、今回の感染例が1市2省と広範囲に及んでいることを受け、感染ルートの特定を急ぎ、ウイルスの封じ込めに全力を挙げる方針。
上海市で死亡した87歳の男性は、家族内での感染も疑われる可能性があるが、上海市政府の担当者は2日の記者会見で、同時期に肺炎の症状を起こした男性の2人の子供からはH7N9型が検出されておらず、人から人への感染は現時点で不明とした。2人の子供のうち1人は死亡した。
※鳥インフルエンザ
A型インフルエンザウイルスの感染による鳥類の疾病。H7N9型もA型インフルエンザウイルスの一つ。インフルエンザウイルスは、ウイルスの表面にあるタンパク質のヘマグルチニン(H)とノイラミニダーゼ(N)の種類によって型が分類される。2009年に、豚のウイルスから人に大流行した新型インフルエンザ
鳥インフル?上海に「原因不明の重症肺炎」患者
【広州=吉田健一】上海市で男性2人が鳥インフルエンザ(H7N9型)に感染して死亡した問題で、2日付の中国系香港紙・文匯報は、同市内の大規模病院で3月中旬以降、似た症状を訴える「原因不明の重症肺炎」の患者5人が入院治療を受けていると、同病院の呼吸器科医師の話として報じた。
H7N9型への感染の有無は明らかでないが、死亡した2人の感染を中国衛生当局が把握したのは3月29日午後とされ、同病院が5人の治療開始時点でH7N9型への感染を想定していなかった可能性がある。
5人は男性4人、女性1人で、年齢は60-70歳。5人が治療を受けている病院は、死亡した2人が入院していた病院と同じ地区にあるという。
中国で新たに4人感染 範囲広がり警戒強化 鳥インフル
【上海共同】中国江蘇省政府は2日、省内で4人が鳥インフルエンザウイルス(H7N9型)に感染し、いずれも重体と発表した。中国当局が人への感染確認は初めてとしているH7N9型の感染が確認されたのは、計7人となった。
H7N9型の感染で、上海市の男性2人が死亡し、安徽省の女性が重体になったことが既に分かっており、感染範囲がさらに広がった。
江蘇省政府は事態を重視し、情報収集や予防、治療に当たる専門チームを発足、警戒態勢を強化した。
発表によると、江蘇省で感染が判明したのは、食肉処理に従事する南京市の45歳の女性、木材加工に従事する宿遷(しゅくせん)市の48歳の女性、蘇州市の83歳の男性、無錫市に住む32歳の無職女性。4人は3月19〜21日に発熱し、同月下旬に症状が悪化した。
同省政府が4人と接触した住民らを調査したところ、現時点で鳥インフルエンザの症状は確認されていないとしている。
一方、2人の死者が出た上海市の地元政府は2日、緊急記者会見を開き、全市で警戒態勢を敷いたと発表。上海市の川で3月に見つかった大量の豚の死骸から鳥インフルエンザウイルスは見つかっていないと説明した。
世界保健機関(WHO)は2日までに声明を発表。感染ルートの調査が続いているとした上で「中国当局と連絡を取りながら事態を把握していく」とした。
香港の人権団体、中国人権民主化運動ニュースセンターは2日、上海市で死亡した2人以外にも同市で5人が原因不明の重い肺炎になっていると伝えた。ただ上海市は同日の会見で「原因不明の肺炎の新たな報告はない」と説明した。
鳥インフル、人から人の感染証拠なし…WHO
【北京=竹内誠一郎】中国で人への感染が初めて確認された鳥インフルエンザ(H7N9型)について、世界保健機関(WHO)の北京事務所代表は1日、報道陣に対し、「(死者2人、重体1人の)3件はいずれも孤立したケースで、人から人への感染が起きたことを示す証拠は見られない」とする見解を示した。
ロイター通信が伝えた。
一方、WHOは公式ホームページ上で、中国の国家衛生・計画出産委員会から感染について報告があったことを発表し、関係各国へ警戒を呼びかけている。
はH1N1型。アジアを中心に死者が相次ぎ、人から人への感染拡大が心配されている鳥インフルエンザはH5N1型。(共同)