河南省に拡大、感染64人 鳥インフル、死者14人に 北京で初の未発症者
【上海、北京共同】中国河南省政府は14日、省内の男性2人が鳥インフルエンザウイルス(H7N9型)に感染したと発表した。河南省での確認は初めて。北京市衛生局は15日、北京で新たに4歳男児が感染していたことを明らかにした。この4歳男児は症状が出ないまま感染が確認された初のケース。
一方、上海市では感染が確認されていた患者のうち2人が死亡。江蘇省政府は15日、感染が確認され重体となっていた南京市の77歳の女性が亡くなり、同省昆山の男性の感染が新たに確認されたと発表。浙江、安徽の両省も15日、感染者がそれぞれ1人ずつ判明したと明らかにした。中国全体の死者は計14人、死者を含む感染者は計64人。
同型ウイルスの感染は上海市、江蘇、浙江、安徽各省の中国東部に加え、北京市、河南省に拡大した。
河南省で感染が判明したのは、開封市の調理人の男性(34)と、周口市で農業に従事する男性(65)。上海市で死亡したのは67歳の女性と77歳の男性。他に上海市で3人、浙江省で4人、江蘇省で2人の感染も分かった。
北京市で新たに感染が確認された4歳男児が入院していた病院の関係者は「発熱もせきもないが、隔離は必要だ」と指摘。中国でこうした「潜在的感染者」がほかにも発生している可能性が出てきた。
北京市衛生局によると、今回の4歳男児のケースは、13日に同市で初の感染が判明した7歳女児の両親が食用の生きた鳥を販売する仕事に従事していたことをきっかけに分かった。市当局がこの女児の両親らが販売した鳥の購入者らを追跡調査したところ、男児の感染が見つかったという。
新華社電によると、同一家族で2人の感染が確認された初のケースとなった上海市の夫婦のうち、4月3日に死亡した妻(52)は生前、ニワトリなど生きた家禽(かきん)を販売する店の近くで日常的に買い物をしていたことが分かった。
市政府は現時点で人から人に感染したと判断する十分な根拠はないとしているが、夫婦と接触した人や周辺環境などの調査をさらに進める方針。
鳥での拡大防止が急務 ウイルス、北京に飛び火 中国鳥インフルエンザ
中国の上海市とその周辺の省に限られていたH7N9型鳥インフルエンザウイルスの感染者が、北京市と、より内陸部の河南省に飛び火した。専門家は鳥の間での感染がこれ以上広がらないよう、拡大防止策に全力を挙げるべきだと訴える。
▽鳥から鳥へ
上海市から約千キロの北京市で13日、約800キロ離れた河南省で14日、新たに感染者が見つかった。京都産業大の大槻公一(おおつき・こういち)・鳥インフルエンザ研究センター長は原因として二つの可能性を指摘する。
一つは、ウイルスが鳥から鳥に感染しながら北京近郊の養鶏地帯にまで広がった可能性。高病原性ウイルスの場合は鳥が大量死して発覚するが、今回のウイルスは鳥で重い症状が出ないため、気づかれないまま流行拡大が進み、それが人に飛び込んでいるという考え方だ。
大槻さんは「人への感染の前提は、鳥で大規模な感染があることだ」と指摘。ウイルス検査や、感染歴を見つける血清検査を進め、感染の拡大状況や経路を把握することが大切だとする。
▽裏で流通?
もう一つの可能性は、ウイルスの拡散対策として上海市や南京市で生きた食用の鳥の市場が閉鎖され、出荷先に困った生産者が感染のなかった地域に販路を求め、感染した鳥が持ち込まれたというものだ。
農水省の家畜防疫担当者は「市場の鳥を処分して完璧に消毒をし、裏で売られるようなことがないよう監視する。患者は早期に治療する。それを徹底できるかだ」と中国政府の対応を見守る。
人から人に容易に感染し、大流行を起こすようなウイルスになっていないかにも関心が集まる。
13日には、H7N9型に感染し死亡した52歳女性の夫が、同型のウイルスに感染していたと上海市政府が発表した。北京市でも感染が確認された7歳女児の周辺の人たちへの検査で、4歳男児の感染が分かったが、鳥のウイルスとの接触がありうる環境にいたなどとして、人から人への感染例と認定されていない。
大槻さんは「人から人に容易にうつるウイルスなら、感染者の周囲でも相当見つかるはず」と指摘。危険性が急上昇したとの見方には否定的だ。
▽両方の可能性
確認された患者は増え続け、60人を超えた。国立感染症研究所の砂川富正(すながわ・とみまさ)室長は「実際に(鳥から人への)感染が拡大しているため患者が増え続けているのか、監視体制が改善されたために患者が見つかっているのか、両方の可能性がある」と話し、全体状況の把握にはもう少しかかるとみている。