皮膚がんに注意  誰もがかかる可能性、
皮膚がん 早期発見、治療で完治

 

   ◇なかなか治らないできもの、要注意 長く放置、転移の危険も

 「痛くもかゆくもないけれど、なかなか治らない」。そんなできものが、もしかしたら皮膚がんかもしれない。紫外線が引き金となるものもあるが、多くは原因不明で、誰もがかかる可能性がある。早めに治療すれば完治するが、長く放置しておくと転移する危険も。皮膚がんを患ったという女性に取材し、早期発見のポイントなどを専門家に聞いた。【五十嵐朋子】

 中区の診療所職員、山本明子さん(52)は昨年秋ごろ、左頬に小さなできものができていることに気づいた。薄い茶色で痛みやかゆみはなくふわふわした手触り。「にきびかな?」と思った。鏡で見ながら指で押してみると内出血し、黒っぽく変色。もともと湿疹(しっしん)ができやすい体質だったため、あまり気にもとめず放っておいた。

 春になり、目元にできた別の湿疹のため近所の皮膚科を受診。医師に「他に気になるところはありませんか」と聞かれて内出血のことを話すと、医師はルーペで患部を確認。医学書を取り出して調べていたが、「私にはちょっと分からない。大きい病院で調べてもらった方がいい」と、総合病院への紹介状を書いてくれた。岡山市内の総合病院で受けた診断は、皮膚がん。「内出血しただけなんですが……」と主治医に尋ねると、「みなさん、そう言って来られます」と返された。転移の危険性はなく、ごく初期だった。

 手術は15分程度。局所麻酔を打って患部を切り取り、4針縫って終わりだ。翌日からはテープを張って洗顔もできた。抜糸してからは、傷跡も目立たない。山本さんは「まさかがんだったなんて。早めに見つかってよかった」と振り返った。

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 皮膚がんに詳しい岡山済生会総合病院皮膚科診療部長の荒川謙三さん(63)に、皮膚がんの原因などを聞いた。皮膚がんの種類は多岐にわたるが、頻度の高いものは数種類だという=別表。

 皮膚は表皮、その下の真皮、皮下脂肪組織の3層でできている。皮膚がんは表皮にできるものが代表的だが、進行すると真皮などに達し、リンパ管を通じて転移する場合もある。進行のスピードはさまざまだが、表皮にあるうちに早期発見すれば完全に治せる。

 外見がほくろやしみに似ている場合もあり、専門家でないと気づかないこともある。荒川さんは「ごく初期には、普通の年齢的な変化に見える。気付くのに早くて半年、1〜2年かかる人もいるでしょうか。『いつからあったのかな』という感じです」。

 特徴はある。普通のしみと違い、皮膚がんの場合は色に濃淡がある。また、大人になってからほくろのようなものができ、徐々に大きくなるようなら注意が必要だ。湿疹(しっしん)と思って治療していてもなかなか良くならず、紹介を受けて来院する人もいる。

 乳幼児のほくろを心配する親もいるが、一般的にがんの発症は中年以上の人に多い。荒川さんは「ほくろは最初からほくろ、がんは最初からがん、です」。ほくろががんに変わることはなく、10歳以下で皮膚がんになるケースは例外的だという。

 ◇日焼け止めで紫外線を防ぐ

 がんの原因は不明な場合がほとんど。予防するのは難しいが、一部の皮膚がんの原因となる紫外線を防ぐことはできる。荒川さんは「日焼け止めは効果があります。体全体のことを思えば、外で運動することも大事。極端に日光を避ける必要はありませんが、長時間炎天下にいるような時には、使うことをお勧めします」。

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 ◇頻度の高い皮膚がん

 ◆日光角化症
 紫外線が原因。長年にわたって日光を浴びてきた高齢者に発症する。顔や手など、日に当たる部分だけにできる。進行して転移の危険がある「有棘(ゆうきょく)細胞がん」になる場合も。

 ◆基底細胞がん
 転移の危険がほとんどない。目の上や鼻筋のいわゆる「Tライン」に多く、ほくろに似た外見で黒っぽい色。「血が出るようになった」と来院するケースが多いという。

 ◆ボーエン病
 湿疹に似て、軽いかゆみを伴うこともある。「湿疹の治療をしていたが、よくならない」と紹介を受けて来るケースがある。

 ◆メラノーマ(悪性黒色腫)
 日焼けの色のもととなる「メラニン色素」を作る細胞が悪性化する。およそ半数は手や足にでき、黒色。顔や体では濃淡のあるしみのようなものができる場合や、しこりができる場合がある。しこりは小さくても進行している可能性があるので、注意が必要だ。

2013年5月17日 提供:毎日新聞社