誤解与えかねない「特保」広告も
 

脂肪吸収の抑制、消費者が過大に期待

 特定保健用食品(特保)には、体調を整える成分が入っており、その食品が本当に健康に役立つかどうか、動物やヒトでその効果や安全性の試験をした上で申請され、国が厳正に審査し、消費者庁より表示が許可される。これまでに数々のヒット商品も生まれている特保だが、中には誤解を与えかねない宣伝表示も見受けられるという。

 このほど名古屋市内で開催された第67回日本栄養・食糧学会大会でも、特保をめぐるいくつかの発表があったが、東京薬科大学生命科学部の板倉ゆか子氏は、特保のWebサイトにおける宣伝広告の問題点について検証結果を報告した。対象としたのは、昨年12月21日時点で許可された1029品目、承認1品目。

 許可を受けた表示内容に「脂肪」という言葉が見られる商品は、条件付き特保1品目を含め104品目あり、そのうち44品目は「中性脂肪」を含んでいた。そこで、国立健康・栄養研究所の健康食品の安全性・有効性情報サイトにある「特定保健用食品:商品一覧」に掲げられた「食後の血中中性脂肪が上昇しにくい、または身体に脂肪がつきにくい」表示をした食品20品目を中心に、Webサイト上の商品情報を12月下旬から1月上旬にかけて検索し、ヒットしたものを対象とした。

 主に有効性について、その宣伝広告の妥当性を、一昨年6月に消費者庁が公表した「特定保健用食品の表示に関するQ&A(事業者のみなさまへ)」を参考に、検討した。

 それによると、これらの商品のWebサイト広告にはグラフを用いたものが多く、作用の差が目立つように加工されているものも散見された。中には、図に被験者背景などの詳細な記載がないものや、「臨床試験」という言葉の使用もあったほか「血液中」という表示が分かりにくいもの、中性脂肪の低下率を前面に押し出しての宣伝や、ダイエットの効果があると思わせる画像が使われているものもあった。
 中には、医薬品と肩を並べる効果まで期待できる表現も見られるなど、「特保のWebサイト広告の中には、Q&Aから見て問題になる点が未だに散見される」ことを、板倉氏は指摘した。

 難消化性デキストリンを「関与する成分」とする特保のコーラ飲料が昨年4月と11月に発売されて以来、『脂肪の吸収を抑える』との宣伝広告が目立つようになったとして、群馬大学教育学部家政教育講座の高橋久仁子氏は「中性脂肪」に言及する特保の宣伝広告等の問題点について検討、報告を行った。

 これらの飲料の「許可を受けた表示内容」には、『難消化性デキストリンの働きにより、食事から摂取した脂肪の吸収を抑えて排出を増加させ、食後の血中中性脂肪の上昇を抑制するので、脂肪の多い食事を摂りがちな方、血中中性脂肪が気になる方の食生活の改善に役立ちます』とある。

 食後の血中中性脂肪の上昇を抑制するのが保健効果であるが、難消化性デキストリンを形容する“食事から摂取した脂肪の吸収を抑えて排出を増加させ”の部分が強調され、同飲料が「脂肪の吸収を抑える」効果があるかのように印象づけているとして、販売企業2社に「脂肪の吸収を抑えて排出を増加させ」の根拠を質問したところ、同一の研究論文を両社が示したという。

 それによれば、「食事中の脂質量は55g。糞便中の脂質量は、難消化性デキストリン15g摂取群では1・44g、非摂取群では0・77g。この差は有意」であった。特保コーラ飲料1本中の難消化性デキストリンは両製品とも約5gであり、その3倍量の当該物質摂取による糞便中の脂質増加量は、わずか0・67gであり、「統計的に有意な差とはいえ、これを根拠に脂肪の吸収を抑えると宣伝するのは、消費者に過大な効果を期待させるもの」とした。

 このほか、烏龍茶重合ポリフェノールを「関与する成分」とする飲料も、「脂肪の吸収を抑えて排出を増加させ」とあるが、その根拠は3日間の「食事中の脂質量は270g。糞便中の脂質量は、当該物質摂取群では19・3g、非摂取群では9・4gで、この差は有意」としているが、これについても摂取した脂質量の多さには言及せず、排出量の増加だけを強調するのは不適切ではないか、というもの。

 高橋氏は「この“許可を受けた表示内容”並びに“脂肪の吸収を抑える”との宣伝広告文言は、消費者に『この飲料を飲めば、食べた脂肪の吸収を減らせる』との誤解を与えかねない」と指摘した。

2013年6月17日 提供:薬事日報