飽食背景に痛風患者急増 発症年齢ピークは30代
 

飽食背景に痛風患者急増 発症年齢ピークは30代 尿酸値抑える生活を
 
「風に吹かれただけで痛む」「まるで万力で締め付けられたよう」―。ある日突然、足の親指の付け根などが赤く腫れ、激烈な痛みに襲われる痛風。その背後には、主に食生活が原因で体内の「尿酸」が過剰になる高尿酸血症が潜んでいる。飽食の時代といわれて久しいが、この間、国内の痛風患者は急増し、発症年齢のピークは30代へと若年化した。高尿酸血症は痛風だけでなく腎障害や高血圧、糖尿病、動脈硬化などとの関連も指摘される。尿酸値の高い人は生活の見直しが必要だ。

 ▽明け方の激痛

 3年前の9月中旬、都内に住む男性会社員のAさん(37)は、右足親指の付け根に軽い痛みを感じた。そのうち治るだろうと様子を見ていたが、2日後の明け方、激痛で目が覚めた。患部は真っ赤に腫れ上がっていた。

 帝京大病院(東京)で検査を受けると、尿酸値は血液100ミリリットル当たり7・4ミリグラム。高尿酸血症の基準値7ミリグラムを超えていた。その日は痛み止めの投与だけで帰宅し、9月下旬にあらためて専門外来を受診した。

 Aさんの身長は166センチ。今でこそ体重は68キロだが、10年ほど前には85キロあったことも。ビールを毎日2〜3本飲み、コーラ飲料も好物だった。

 初めての痛風発作だったことから、当面は食生活に気を付けながら経過を見ることになった。ところが10月末、今度は右膝に激痛が走った。発作を繰り返す可能性が高くなったため、11月末から薬の服用を始めた。

 ▽95万人超

 「痛風患者は右肩上がりで増えています。そのベースにある高尿酸血症の頻度は、成人男性の22%とか26%と報告されており、特に30代では30%に達するとみられています」とAさんの主治医、藤森新(ふじもり・しん)・帝京大医学部教授(内科)は解説する。

 厚生労働省の国民生活基礎調査によると、2010年に「痛風で通院中」と答えた人は全国で95万7千人。1986年の25万4千人と比べて4倍近くまで増加した。その大半は男性だ。

 若年化も進み、東京女子医大の報告では、60年代に50代、40代、30代の順に多かった発症者が、80年代には30代で最も多くなった。

 痛風には未解明の部分も多いが、発作の仕組みはこう考えられている。尿酸は体液に溶ける限界を超えて濃度が高くなると、針状の結晶となって関節周辺にたまる。何らかの刺激が加わると結晶がはがれ落ち、これを異物と認識した白血球が攻撃して激しい炎症、つまり痛風発作が起きる。

 ▽プリン体

 「発作はどの関節にも起こり得ますが、最初の発作の7割は足の親指です。『何らかの刺激』という点で、手より足の方が負荷が大きいのかもしれません」と藤森教授。

 発症には遺伝的な体質と、食生活などの環境要因が絡む。食事で注意すべきなのはプリン体の取り過ぎ。プリン体は体内で分解されると尿酸に変わる物質で、動物の内臓や魚の干物、白子などに多く含まれる。

 ビールもプリン体を多く含み、痛風の元凶のようにいわれるが、アルコールはそれ自体、体内で尿酸を大量に作ったり尿酸の排せつを妨げたりする。ビールに限らず、飲み過ぎは避けるべきだ。

 治療では現在、3種類の尿酸排せつ促進薬と、2種類の尿酸生成抑制薬が使われている。さらに生成抑制薬1種類が近く承認される見込みだ。なぜ尿酸値が高いのか、患者の病型を見極めて使い分ける。Aさんには排せつ促進薬が用いられた。尿酸値は6ミリグラム前後に落ち着き、その後、発作は起きていないという。

 「高尿酸血症は、糖尿病や動脈硬化性疾患の危険性も高めます。健診で尿酸値が高かったら、生活改善のきっかけにしてほしい」と藤森教授は話す。(共同=赤坂達也)

2013年6月18日 提供:共同通信社