アナフィラキシーショック

  

薬剤や、ハチ毒によって、死に至る危険性がある
アナフィラキシーショックについてお話しします。


アナフィラキシーとは

ある種の抗原によって感作された個体に同じ抗原が再び入った場合に生じる、即時型アレルギー反応のことをいう。この反応が、全身の臓器症状を伴って起こった場合、全身性アナフィラキシーと呼ぶ。また、末梢血管不全、血圧低下などの重篤な全身症状をきたしたものを、アナフィラキシーショックと呼ぶ。アナフィラキシーショックを引き起こす物質で頻度的に多いものは、薬剤、ハチに刺された時に体内に入るハチ毒、それに食物である。わが国のアナフィラキシーショック死者数は年間約50〜60人と報告されており、原因別にみると、薬剤が10〜20人、ハチ刺傷で20人前後、食物では数人程度である。

アナフィラキシーショックが起こる機序

ある物質に対してアナフィラキシー反応を起こす人は、その物質に対するIgE抗体をもっている。これらの抗体は、末梢血液中の好塩基球や組織に存在するマスト細胞の表面に結合している。そこに原因物質が入ってくると、これら細胞表面に存在している抗体に結合する。その結果、好塩基球やマスト細胞が活性化されて、ヒスタミン、ロイコ卜リエン、ブラジキニンなどのケミカルメディエーターが一気に放出され、これらメディエーターの作用により、じんま疹、血圧低下、気管支収縮、腹痛、下痢などの全身症状が現れる。

アナフィラキシー様反応

アナフィラキシーは、基本的には即時型アレルギー反応の機序により起こるが、それ以外の機序でも起こることもある。これをアナフィラキシー様反応と呼ぶ。ある種の抗癌剤や造影剤は、好塩基球やマスト細胞を直接活性化することがあり、その結果、アナフィラキシー反応と閉じ反応を起こす。したがって、初回投与でも重篤な全身反応を起こすことがあり、注意が必要である。

アナフィラキシーショックの治療

一番重要なことは、呼吸困難、喘鳴、チアノーゼなどの呼吸器症状、血圧低下などの循環器症状が認められたら、直ちに、0.1%アドレナリンの筋肉内注射と急速輸液を行うことである。アドレナリンの投与量は小児では0.01ml/kg、最大0.3ml、成人ならば0.3〜0.5mlを目安とする。改善がない場合や悪化する場合は追加投与を行う。患者が自宅にいて、且つ、アドレナリン自己注射用製剤を持っているならば、それを大腿部に打つことを指示する。また、必要に応じて酸素吸入も行う。

アナフィラキシーショックの予防

過去のアレルギー疾患歴、薬剤、食物に対する反応性などの問診を十分に行い、アレルギー症状の既往歴があれば原因薬剤の再使用や食物摂取をしない。また、原因と思われる薬剤、食物と共通抗原性のあるものに対してもアレルギー反応を示すことがあるので注意が必要である。また、原因物質との接触によりアナフィラキシーが起こってしまったときのために、アドレナリン携帯自己注射用製剤を常に持ち歩くことを勧めるのがよい。それを自己注射するタイミングであるが、吐き気、発汗、めまい、じんま疹など何らかの全身症状が出現した場合に使用することが推奨される。


2013年7月24日 提供:獨協医科大学 福田 健 先生