黄ばんだ歯を白くすることを専門に行う歯科医院が増えている。
女性患者を意識し、サロン風のおしゃれな雰囲気の中で、
歯の美白治療やクリーニングをしてくれる。
おしゃれな医院が増加
歯科医常勤、事前チェックを

「歯を白くしたくて。だって笑顔に自信がもてるでしょ」と女性会社員のSさん(27)。美白専門の歯科医院で歯を白くする治療を受け、専用の用具を購入、時々自宅で利用しているという。

歯を白くしたいというニーズが女性たちの間で高まっている。「歯が白いと、それだけで表情が生き生きと見えます」と話すのは、歯の美白専門クリニック「ティースアート」を全国12ヵ所で展開する歯科医の椿智之代表。

欧米、特に米国では、歯を白くする美白(ホワイトニング)治療を歯科医院で受けることが広く行われている。日本でもここ数年、美白専門の歯科医院が増えてきた。

訪れる人の大半は女性だという。このため、美白歯科医院は、エステサロンやしゃれた美容院のような雰囲気になっている。「歯科医に対しては、歯を削られる、痛い、怖いといったイメージがある。そうではなく、歯を美しくする新しいスポットというイメージを打ち出したかった」と椿代表は話す。

歯はお茶の茶渋やたばこのヤニ、コーヒー、カレーなどの色素で黒ずんでくる。老化も黄ばみの原因だ。こうした汚れや黄ばみを分解・除去し、漂白剤で白くするのが美白治療だ。



美白歯科では、黄ばんだ歯を白くする美白治療をメーンに、歯垢(しこう)や歯石を除去するクリーニング、歯につやを出す歯のマニュキュア、歯ぐきのマッサージなどを受けることができる。医院によっては歯の美白やクリーニングを専門にしており、虫歯や歯周病の治療、歯の矯正(きょうせい)などはしないところもある。

美白専門歯科医院を選ぶ
ポイント
常勤の歯科医師がいる
歯科衛生士がいる
電話で問い合わせたときに、内容などをきちんと説明してくれる
施術前にカウンセリングを行い、希望の白さになる回数の目安を示してくれる
施術料金を明確に示している
施設には通常は歯科医が常勤し、施術に使う薬剤にアレルギーがないかなどを事前にチェックすることになっている。その後は主に歯科衛生士が施術する。

まず、歯の表面の汚れや歯垢などを、数種類の研磨剤や超音波などを使ってクリーニングする。
次に、歯ぐきに薬剤がつかないように保護して、漂白剤(過酸化水素など)を歯に塗り、レーザーやプラズマ光を当てて、歯についた色素を分解、漂白する。

その後、歯に塗った漂白剤を落とす。これを2、3回繰り返した後、最後にフッ素を歯に塗って虫歯予防をして終了となる。1回の所要時間は50分程度。費用は医院によって異なるが、例えば前歯6本の美白だと1回4千円−1万円程度だ。

「1回でかなり白くなるが、本人が希望する白さになるのは3回目ぐらい。1度白くなった歯は半年以上保てる」と話すのは、東京・渋谷と銀座にある美白歯科「ホワイトエッセンス」の歯科医師、細谷紀之エグゼクティブディレクター。

漂白剤で歯の表面を白くするため、歯を傷めないかが気になるが、「薬剤は歯の外側のエナメル質だけに作用し、内側の歯髄には浸透しない濃度に調整してある。歯を傷める心配はない」(細谷氏)と説明する。



何度も医院に通うのは大変という人向けに、自宅で美白できる用具を販売しているところもある。医院に数回通った後、専用の用具を使い自宅で定期的にケアすれば、「歯の白さを約2年は維持できる」と話すのは、東京・新宿などで「ホワイトホワイト」を3ヵ所に展開する歯科医の石井さとこ院長。

歯を白くしたり、クリーニングしたりすることを通じて、歯に対する意識が高まり、虫歯や歯周病などの予防に、これまで以上に関心が向くことを期待している。

ただし、サロンタイプの美白医院を選ぶときは、事前に歯科医が常勤しているかどうかを確認したい。

「非常勤の医師しかいないところもあるようだが、これは違法。美白も歯科治療の一環。歯科医が必ず常勤する施設を選ぶことが安全に治療を受けるポイント」と、日本歯科審美学会の松尾通副会長(松尾歯科医院院長)は注意を促す。(『日経ヘルス』編集部)
(2003.4.26 日本経済新聞)