命を支える輸送システム細胞内小胞
【解説】外敵を攻撃する免疫や、脳からの命令を伝える神経など、私たちの体を構成する細胞同士は、情報や物資となるタンパク質やホルモンなどを受け渡しながら命を支えている。今年のノーベル医学生理学賞は、細胞の中で作られたタンパク質などの物質を細胞の内外に輸送するシステムの解明に与えられた。
細胞内で作られた物質はまず、小胞というコンテナに入れられる。小胞は細胞膜など目的地にある鍵穴にぴったり合う鍵を持っているため、間違った場所に配達しないで済む。小胞は膜に到達して融合すると、積み荷の物質を押し出し、輸送を終える。
この優れたシステムを担う遺伝子は、酵母から人間まで幅広い生物が持っているという。
輸送の失敗が病気に結びつくことも分かった。インスリンを膵臓(すいぞう)のベータ細胞がうまく出せなければ、血糖値を下げられず糖尿病の発症を招く。免疫細胞が外敵の情報を伝えられないと、自分の体を攻撃する恐れがある。ある種のてんかんは、小胞と膜の融合の失敗と関連しているようだ。
受賞が決まった3人の発見は、生命現象の解明に加え、病気の理解と治療開発への可能性を開いたとも言える。