梅酢の成分がインフルエンザに効果 ウイルスの増殖抑制 田辺うめ振興協
和歌山県の田辺市とJA紀南でつくる「紀州田辺うめ振興協議会」(会長=真砂充敏市長)は8日、梅干し製造時に発生する梅酢から抽出した「ポリフェノール」にインフルエンザウイルスの増殖抑制と不活性化作用を発見したと発表した。協議会は「消毒薬やうがい薬、抗ウイルス食品の開発につなげたい」と話している。
研究は県果樹産地再生緊急対策事業を活用。和歌山信愛女子短期大学の小山一学長(ウイルス学)の研究グループが、わかやま産業振興財団の医農連携コーディネーターで、梅酢ポリフェノールの抽出に成功した三谷隆彦さんと協力して昨年度から始めた。
小山学長によると、梅酢ポリフェノールは微量でインフルエンザウイルスに強い殺作用を示すが、細胞組織への障害作用は弱く、安全性が高い。
研究ではイヌ腎臓由来細胞にA型インフルエンザウイルスを吸着させ、梅酢ポリフェノールを含ませて培養したところ、含まない場合に比べ、ウイルスの増殖が100分の1に抑えられた。
また、梅酢ポリフェノールとインフルエンザウイルスを体温を想定した30度で5分間保温すると、感染性ウイルス量が千分の1に減った。いずれも梅酢ポリフェノールの濃度が濃いほど効果が高かった。
一方で、細胞への影響は梅酢ポリフェノールの添加の有無で大きな差がなく、細胞障害作用は弱いという。
梅に含まれる梅酢ポリフェノールは重量の0・1%程度。梅干し製造時に80%は梅干しに残存しており、成分に同様の効果があると考えられるという。研究に使用した梅酢ポリフェノールには、梅酢に含まれる塩分やクエン酸は全く含まれていない。
真砂会長は「うれしい結果が出た。広報するとともに、商品化を検討したい。今後も梅の機能性研究を続け、梅産地の振興や消費拡大につなげたい」と話した。
今後は人への影響についてさらに研究を進める。市とJA紀南は商品化を視野に「抗ウイルス物質およびこれを含む医薬等」について、すでに特許出願している。
研究成果は10〜12日に神戸市である日本ウイルス学会学術集会で発表する。市内でも19日に梅関係者を対象に報告会を開く予定。