性産業従事者感染率50倍 インドネシアでHIV調査
インドネシアで性産業従事者のエイズウイルス(HIV)感染率は一般の人に比べて50倍近いことが、神戸大と同国のアイルランガ大の調査で分かった。性感染症の知識不足を背景に、感染者が急増したとみられる。12月1日は世界エイズデー。神戸大は同国の保健所などに対し、予防知識の啓発など対策を提案している。(金井恒幸)
HIVの推定新規感染者は世界的には減少傾向だが、インドネシアでは過去10年間で約10倍の約5万5千人(2011年)に急増。推定総感染者は10年間で約30倍の約38万人(同)となり、深刻な状態が続いている。
世界規模の感染症防止に役立てるため、神戸大はアイルランガ大と共同研究を実施。昨年から今年にかけ、同大があるジャワ島東部の大都市スラバヤで、売春など性産業に従事する男女200人の血液を調べた結果、11%に当たる22人がHIVに感染していた。感染率は同国の平均(0・2〜0・4%)と比べ、圧倒的に高かった。
アンケートをしたところ、感染者のうち9割近くは性感染症の知識がなく、性行為の際、感染防止策となるコンドームを使っていなかった。感染者の3割以上が週3回以上働き、感染の拡大が懸念される。
現地で研究を進める神戸大大学院医学研究科付属感染症センターの小瀧将裕(こたきともひろ)技術補佐員は「今後も感染率の調査を進める一方、感染したウイルスの型の研究にも取り組み、適切な診断や治療に役立てたい」と話す。
HIV血液、数人に輸血 日赤検査すり抜け 厚労省、
感染有無調査 03年以来、26日対応協議
エイズウイルス(HIV)に感染した献血者の血液が日赤の安全検査をすり抜け、数人に輸血されていたことが25日、関係者への取材で分かった。厚生労働省と日赤が輸血を受けた人の感染の有無を調べている。
2003年に発覚した輸血による HIV感染事例の後、感染者の血液が輸血に使われたのは初めて。日赤は安全対策を強化していたが、防げなかった。HIV検査目的での献血だった可能性があるといい、対策の一層の充実が急がれる。
厚労省は26日に血液事業部会運営委員会を開き、対応を協議する。
関係者によると、11月に献血した男性のHIV感染が献血血液の安全検査で判明し、輸血には使われなかった。この男性は以前にも献血したことがあり、日赤が保管検体を調べた結果、HIVの遺伝子が検出された。前回献血時の血液は安全検査に合格し、医療機関で数人に輸血されていた。
感染初期にはウイルス量が少なく、検査をしても感染が分からない「空白期間」があり、今回もこれがすり抜けの原因となった可能性が高い。
男性は献血時の問診で、感染症リスクを回避するために設けられている性的行動に関する質問に事実と異なる内容を答え、献血できるようにしていたことを日赤などの調査で認めているといい、厚労省は検査目的の献血だった疑いが強いとみている。
日赤は、遺伝子の核酸を増幅して調べる高感度のNATと呼ばれる安全検査を1999年に導入したが、2003年にすり抜けによる輸血で患者のHIV感染が発覚した。対策強化のため、日赤は50人分の血液をまとめて調べていた検査手法を、04年に20人分に見直した。来年度には献血者1人ずつ調べる方式に改める方針で準備を進めている。
※献血血液の安全検査
献血時の問診で日赤は、エイズウイルス(HIV)などの感染症リスクがある献血者を排除するのを目的に、不特定の相手との性的接触などがあるか尋ねている。採取された血液は各種ウイルスや梅毒などの抗体検査のほか、B、C型肝炎ウイルスとHIVなどに関しては高感度の核酸増幅検査(NAT)も実施される。献血血液は輸血用のほか、やけどなどを治療するための血漿(けっしょう)分画製剤の製造にも使われる。分画製剤の場合は、製造過程でウイルスを死滅させる不活化処理が施される。