中国で人への感染が拡大する鳥インフルエンザ(H7N9型)に、厚生労働省などが警戒を強めている。
人から人への持続的な感染は確認されていないが、今後、大流行を引き起こす新型インフルエンザに変化する恐れもある。31日に春節(旧正月)を迎える中国から大勢の観光客の来日も予想され、専門家は「日本でも感染者が出る可能性がある」と指摘する。
◆対応強化
「中国ではこれから旧正月を迎え、感染が加速する可能性がある。日本に入ってくる可能性を考慮すべきだ」
30日に開かれた厚生科学審議会感染症部会。H7N9型の人への感染状況や国の対応について、厚労省の担当者らが説明した後、委員からは対応の強化を求める声が上がった。
H7N9型は昨年3月、上海市で初めて感染者が確認された。夏にはいったん収束したが、昨年10月以降、再び感染者が確認されるようになり、年明けから急増。浙江省や広東省などで103人に上っている。世界保健機関(WHO)などによると、中国本土に加え、香港、台湾でも感染者が出ており、肺炎で重症化するケースも出ている。
◆来日5万人
感染源は分かっていないが、国立感染症研究所(感染研)などによると、生きた鳥など家禽(かきん)類との接触が原因の可能性が高い。上海市などでは、人の移動が活発になる春節を控え、生きた鳥の売買を禁止する決定が出されたが、中国全体から見れば一部で、感染は今後も拡大する恐れもある。
台湾や香港の感染者は、いずれも発症前に中国本土に滞在しており、本土で感染したと考えられている。中国人観光客を顧客とする旅行会社の協議会によると、約1週間の春節の時期に5万人以上の観光客が日本を訪れるとみられる。
感染研の大石和徳・感染症疫学センター長は「中国で感染した人が日本に入国する可能性も否定できない」と指摘。人から人への限定的な感染も確認されており、「現時点で大流行を引き起こすようなウイルスの変化は起きていないが、引き続き警戒が必要だ」と話す。