口の中が渇き、不快感に悩まされるのが「ドライマウス」という病気だ。だ液が減ることで、口臭や歯周病の原因となるだけでなく、入れ歯の調子が悪くなったり、中には肺炎にまで結びつくこともある。「最近、水やお茶が手放せない」などという人は要注意。悪化予防と対策について考えてみよう。 |
口の中やのどが渇くドライマウスの悩みは、食べ物を飲み込みにくい、舌がひりひりと乾く、口内炎や唇のひび割れがひどい、アルコールなどがしみて痛い、味覚が感じられないといった症状で表れる。重症ではない、「何となく嫌な気分」であっても引きずるのはつらいものだ。
「生活の質(QOL)を上げることも治療。放っておけば症状を悪化させる可能性もある。原因を見極め、対策をとるべきだ」と話すのは、歯科医師らを中心に組織したドライマウス研究会の斎藤一郎・鶴見大学教授だ。
ドライマウスかどうかの判定は簡単。十分間ガムをかんで、出るだ液の量が10ミリリットル以下であれば、可能性が高い。同研究会はその上で別表のような項目の問診を基に原因を探り、対処することを呼びかけている。
ドライマウスの原因として、まず考えられるのは薬の副作用によるもの。抗うつ剤、睡眠剤、降圧剤、抗ヒスタミン剤などを常用する人の中に、口やのどの渇きの症状が出る人は多い。
これに当てはまる人は「薬に頼らない生活を意識する。医師に相談して薬の種類と量を変えるのが第一歩」と斎藤教授。眠れない、気分がすぐれない、風邪気味だと、症状ごとに別々の病院から何種類もの薬が出ているケースもある。自分がどんな薬を飲んでいるか、医師には必ず伝え、ドライマウスに悩んでいることを訴えること。
精神的ストレスが影響していることもある。だ液の分泌は自律神経がつかさどっている。緊張状態でのどが渇くことを経験することは多いが、ストレスで緊張状態が恒常化しているわけだ。「配偶者の死をきっかけに、ドライマウスの症状が出るケースがよくある。おけいこや勉強に追われる小中学生など低年齢化で表れることも」(斎藤教授)
この場合は、リラックスの運動などを通じて自律神経の働きをじっくり高めていく必要がある。
高齢者に多いのが、口のまわりの筋力の低下によるもの。だ液をしみ出させるポンプの役割をしている筋肉が衰えたために、分泌が抑えられている。例えば入れ歯が合わないとかみ合わせが悪くなり、だ液が出なくなることもある。だ液が出ないと入れ歯の口への吸着も悪くなるから悪循環。
よく話し、笑い、口のまわりの筋肉を鍛えること。自分に合った入れ歯を整えることと、高齢者だからこそ、かみごたえのあるものを、しっかりかむ習慣を絶やさないことが大切になる。
このほか慢性リウマチなど膠原(こうげん)病の症状とともに、口の渇きに悩む例がある。これはシェーグレン症候群という病気によるもの。更年期の女性の中に多い。さらに糖尿病や腎疾患も原因の1つ。これらの場合は、それぞれの病気の治療とともに解決していく必要がある。
ドライマウス問診表から
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【口の症状】
・口の渇きが3ヵ月以上、毎日続いている
・あごの下が繰り返し、あるいはいつも腫れている
・乾いた食べ物を飲み込む際に、しばしば水を飲む
・夜間に起きて水を飲む
・乾いた食品がかみにくい
・口の中がネバネバする
・口臭がある |
【目の症状】
・目に砂や砂利が入った感じが繰り返す
・目薬を1日3回以上使う
・朝起きた時に目が開けられない |
【関節の症状】
・朝起きた時に手足がこわばる
・手足を曲げると痛い |
【生活全般】
・最近、忙しかった
・ひどくショックを受けるようなことがあった
・こわい夢を見る
・人の言動が気に障ってイライラする
・緊張した時に、ひどく汗をかいたりふるえたりする
・寝つきが悪い? 眠っていてもすぐに目を覚ましやすい
・人から神経質だと思われている |
(ドライマウス研究会の資料を基に作成)
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また、口呼吸が習慣になっているために渇きが起きるケースでは、口を閉じてガムをかむなど積極的に鼻呼吸に変える対策が効果的だ。
口の中はわけもなく湿っているのではない。だ液は重要な働きをしている。でんぷんを分解する消化。そしゃくや飲み込みを補助する仕事。口の中の食べ物のかすをきれいにする。だ液は抗菌物質を含んでいるので、病原菌に対抗する役目も担う。
だ液の減少を補助するためにできることは何か。スポーツドリンクなど水分を頻繁にとる。ガムを噛み、硬いアメをなめる。口の中の抗菌力が衰えているので、シュガーレスのものにするのがいい。食事では意識してかむ回数を増やす。梅干しなどはだ液を出しやすくするが、酸がしみる場合は控える。アルコールを抑えることも重要だ。
「渇きの症状を軽くするための薬剤には、保湿ジェルという塗るタイプや、ヒアルロン酸入りうがい薬というアルコール分が入っていないものがある。また、モイスチャートレーといって、湿ったガーゼをを上あごにつけておく、入れ歯のような形をした装置もある」と斎藤教授。
ドライマウス研究会のホームページ(http://www.drymouth-society.com/)では各地で相談にのる歯科医をリストで紹介している。
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