傷治し感染抑える化合物 大阪大開発、皮膚潰瘍に


傷治し感染抑える化合物 大阪大開発、皮膚潰瘍に

 傷が長い間ふさがらず感染症にかかりやすい「難治性皮膚潰瘍」を、細菌感染を抑えながら治す化合物を大阪大とベンチャー製薬企業のチームが開発し、米オンライン科学誌プロスワンに28日発表した。

 チームによると、患部では皮膚のバリアー機能が低下し、既存の薬では抗菌性を保つことと傷修復の両立が難しい。大阪大大学院生の冨岡英樹(とみおか・ひでき)さん(臨床遺伝子治療学)は「多剤耐性菌にも効果があり、院内感染の予防も期待できる」と話す。

 難治性皮膚潰瘍は血流の悪い部分に起きやすく、糖尿病やリウマチ患者らで見られ、悪化すると手足を切断することもある。寝たきりの人にできる床擦れも含まれる。

 チームは以前発見した抗菌作用を持つペプチド(アミノ酸化合物)を、より作用が強くなるよう改良。マウスの背中の皮膚を3平方センチ切除した傷口に黄色ブドウ球菌を垂らした後、ペプチドを垂らす実験を4日間続け、傷口の状態を観察した。

 すると実験開始から9日後には傷の広さが約40%になったが、既存薬では約60%だった。培養皿での実験では、緑膿(りょくのう)菌やアシネトバクターなど多くの細菌や多剤耐性菌の増殖が抑えられた。

2014年度中に臨床試験を始め、20年までの認可を目指す。

2014年3月28日 提供:共同通信社