昼寝のすすめ、職場でも 「1日15分」制度化・会議室にソファ30台
昼下がりの眠気、あなたはどう対処していますか。実は最近、昼寝の効用に着目し、就業中の昼寝を認める職場が出てきました。昼寝カフェも登場しています。
平日午後のオフィス。机に突っ伏して眠る男性社員がいる。さいたま市大宮区のリフォーム会社「オクタ」では、ありふれた光景だ。
机上の電話が鳴った。同僚が取ると得意先から。「今、離席しております。後ほど折り返します」と言って電話を切った。
同社は「パワーナップ」と呼ぶ昼寝制度を2012年に採り入れた。約300人の従業員は1日1回15分間、眠たければ眠ってよい。短い昼寝は作業効率向上と健康に役立つという考え方に基づく。
経理担当の山田郁子さん(33)は週3度ほど、ストールを頭からかぶって自席で眠る。「おかげでパソコンの入力ミスが減りました」。広報の安藤小百合さん(28)は「社員が昼寝をしている姿が自然な光景になった。社内の雰囲気も良くなりました」と話す。
IT企業「GMOインターネット」(東京都渋谷区)は会議室に昼寝用のソファ30台を置き、約3千人の従業員に昼休みに開放する。広報の細田暁貴(あき)さん(38)は「自由な発想を生み出すためにも、午後の仕事に向けてリフレッシュするのは大切」と話す。約50社が入居する大阪・梅田の複合ビル「梅田スカイビル」の厚生施設には、昼寝用のベッドやテントがある。
東京・神保町の「おひるねカフェ コロネ」は女性限定の昼寝カフェ。昨年11月オープンし、働く女性や就活中の学生らが1日に20〜30人来店する。アロマが香る睡眠スペースにベッド8台が並び、カーテンで仕切られている。利用料は10分160円。100円で部屋着を貸し出すサービスもある。平均滞在時間は1時間近くになるという。
関連グッズも人気だ。東京の東急ハンズ新宿店は、たたむと辞書に見える枕や、低反発性の小型枕、机にうつぶせになっても呼吸しやすいよう真ん中に穴が開いた枕などをそろえる。
昼寝で仕事の効率は本当に上がるのだろうか。
広島大学の林光緒教授(睡眠学)らは、2桁の数字の計算問題を繰り返し解かせ、合間に20分の仮眠をとる場合と休息するだけの場合の正答率を比べた。仮眠した方が正答率は高かったという。
厚生労働省が3月に公表した新しい睡眠指針には、午後の早い時間帯に30分以内の短い昼寝をすることが作業能率の改善に効果的だと明記された。指針の検討委員会座長を務めた日本大学の内山真・主任教授(精神医学)は「体を横たえずに、椅子にもたれて目をつぶるだけでもリフレッシュする」と話す。
ただし注意も必要だ。「30分以上眠ると、起きてから頭が働き始めるまで時間がかかり、かえってよくない」と内山さん。また、仕事に支障を来すほどの眠気は睡眠不足のサイン。「慢性的な睡眠不足は昼寝では補えない。毎日十分な睡眠を取り、体調を整えることが基本」と強調する。(田中祐也)