ガン:ほぼ全部位のがん治療可能に 兵庫県立粒子線医療センター


ほぼ全部位のがん治療可能に 兵庫県立粒子線医療センター

 兵庫県立粒子線医療センター(たつの市)は、がん治療で照射する放射線のうち粒子線の一種「炭素線」の出力を向上させ、11月をめどに体のほぼ全部位への治療ができるようにする。従来は出力不足で炭素線の粒子ビームが届かない部位があり、別の粒子線「陽子線」で治療を代替してきた。炭素線は陽子線より効果が高い場合があるといい、出力の向上で体内の深部にある前立腺がんなどへの照射が可能になる。(金井恒幸)

 粒子線治療は、ピンポイントでがん細胞に照射して破壊する。従来の放射線治療より効果が高く、副作用も少ないとされる。粒子線のうち炭素線は陽子線と比べて粒子が重く、照射方向は限定される一方、より効率的にがん細胞を死滅させる場合があるという。

 同センターは2001年に設立され、陽子線で03年から、炭素線では05年からそれぞれ治療を始めた。両方の治療ができる国内唯一の施設。既に6千人以上を治療し、患者数は放射線医学総合研究所(千葉市)に次いで国内2位。

 炭素線の出力は320メガボルトから375メガボルトに向上させ、体表から16センチまでだった粒子ビームを21センチまで届かせる。体表から20センチ程度ビームが届けば、体のほぼ全部位への照射が可能になる。深部にある前立腺がんや膵臓(すいぞう)がんにも対応でき、治療の幅が広がる。

 5月1〜6日、出力向上のため施設の改修工事を実施し、炭素線、陽子線ともに治療を中止。同7日からは陽子線だけで治療を再開する。炭素線は従来の出力のままで6月10日ごろから治療を再開し、国の許可を得るなどして11月ごろから、向上した出力で炭素線治療を始める方針。

 このほか、同センターは8月にも、抗がん剤を動脈に注入して患部へ効果的に届けるための血管撮影装置の使用を開始。主に肝臓がんに対して粒子線と抗がん剤を併用し、より高い治療効果を目指す。県の担当者は「設備を充実させ、より高い水準のがん治療を進めたい」とする。

2014年4月30日 提供:神戸新聞