MERS感染、18カ国に WHO、警戒強化呼び掛け
【ジュネーブ共同】サウジアラビアを中心に猛威をふるう中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスの感染が、中東だけでなく米国やオランダなどにも飛び火、これまでに感染が確認された国は18カ国に達した。世界保健機関(WHO)は、感染国だけでなく日本を含む全ての国に、医療施設での感染防止策など警戒を強めるよう呼び掛けた。
MERSコロナウイルスはラクダが人への主要な感染源と疑われており、ワクチンはまだ開発されていない。WHOの15日時点のまとめでは、報告のあった感染例は世界で計572人。うち約3割に当たる173人が死亡した。
WHOによると、サウジで3月以降、感染者が増え始め、4月に急増。4月中旬にはマレーシアでサウジから帰国した男性が死亡し、アジア初の死亡例となった。
米国では今月、サウジから渡航した計2人の感染が確認された。17日には、1例目の感染者と接触したイリノイ州の男性の血液から、ウイルス感染があったことを示す抗体が見つかったことが明らかになった。オランダでもサウジから帰国した男性の感染が判明。オランダで初の確認例となった。
感染が確認された国はほかにヨルダン、クウェート、オマーン、カタール、アラブ首長国連邦(UAE)、イエメン、エジプト、チュニジア、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、英国、フィリピン。
WHOは今月13日、緊急委員会を開き、感染状況を討議。人から人への継続的な感染が起きている証拠がないことなどから「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」には至っていないと判断したが、状況は急激に深刻さを増しているとの認識も示した。
WHOのフクダ事務局長補はジュネーブでの記者会見で、世界中からサウジを訪れるイスラム教徒の巡礼者らに「ウイルス感染についての注意を喚起することが特に重要だ」と強調した。
※中東呼吸器症候群(MERS)
新型肺炎(SARS)を引き起こすウイルスと同じ仲間であるコロナウイルスの新種による感染症。2012年に発見され、サウジアラビアを中心に中東に広がった。感染すると、発熱やせき、呼吸困難、腎不全などの症状が出る。ほとんどで肺炎が起き、多くが下痢を伴う。現段階では特別な治療法やワクチンはなく、対症療法しかない。人への感染力はそれほど強くないとされている。(ジュネーブ共同)
引用:共同通信社 2014年5月19日(月)