あなたの周りに冷え性で悩んでいる男性はいないだろうか――。冷え性は女性特有のように思われがちだが、昼夜の温度差が大きく、仕事や生活の環境が変わりストレスがたまりやすいこの時期には、男性で症状を訴える人が増える。万病のもとといわれており、しっかりと予防を心掛けたい。 |
「足が冷え、体もだるくて疲れやすい」。東京都内に住む30代の会社員、Aさんが体の冷えを訴えたのは3月下旬だった。月初めに東京に転勤してきたばかりで、担当する仕事も変わった。緊張する日々が続いていたという。「足の指先が冷たく、眠りが浅い」。こう悩みを打ち明ける。
東京女子医大の非常勤講師で、冷え性に詳しい古賀駅前クリニック(宮崎市)の川越宏文医師は「最近、冷え性と自覚して病院に来る男性が増えてきた」と指摘する。以前は本人が冷え性と知らずに腰痛や腹痛、頻尿など体の不調を訴えて来るケースが多かったという。
東京ガス都市生活研究所の調べでも、冷え性を抱える男性の存在がくっきり。首都圏の男女(1438人)を対象に、「冷え性を感じるか」と夏場に聞いたところ、男性の12.0%が「感じる」と答えている。ほぼ2人に1人が冷え性と答えた女性(48.3%)に比べると少ないが、冷房の影響がない春先の調査では17.7%と、さらに比率が高かった。
男性に比べて女性に冷え性が多いのは、@体の熱を作り出す筋肉が少ないA低血圧や貧血の人が多いB皮膚の表面温度が低い――などの違いがあるためとされる。さらに月経の影響で腹部に血流が滞りやすかったり、体温を調節する自律神経の働きが乱れたりすることも要因だという。
一方、男性の場合は不規則な生活や偏食、過労などでストレスが重なって起こるケースが多い。中高年はもちろん、若い男性でさえ自律神経の働きが乱れて末しょう血管が収縮、手足の冷えにつながることがある。
特に春は何かとストレスが多い時期。転勤や引越し、異動などで、職場や生活の環境ががらりと変わる人も少なくない。慣れない仕事がもとで緊張が続くだけでなく、歓送迎会などで深酒や夜更しも増え、生活のリズムを乱しやすい。気候的にも昼夜の気温差が大きい日があり、体を冷やす要因にはこと欠かない。
冷え性が怖いのは、頭痛や肩こり、腰痛といった不調だけでなく、もっと深刻な症状に結び付く場合があるからだ。消化器系に影響を及ぼせば、胃腸の弱い人は極度の便秘や激しい下痢になる過敏性腸症候群、胃腸炎などになりやすいとされる。アレルギー性鼻炎や膀胱(ぼうこう)炎、全身の関節リウマチなどは体の冷えと関係が深いという。
男性の冷え性はどう予防したらよいのだろうか。心構えとしてはストレスをためないこと。終わったことはくよくよ悩まず、先のことは悲観しない。具体的な予防法としては、まずはおなかを冷やさないようにすることだ。冷えは体温を調節する体のメカニズムと密接に関係している。おなかなど体の深部が冷えると、熱の放散を防ごうと末しょう血管が縮まり、手足が冷たくなる。
そのために効果的なのは、衣類では腹巻きだ。就寝時だけでなくふだんから身につける。また、通勤や営業などで外出時にかいた汗をそのまま放置すると体を冷やすもと。できれば着替えを用意し、汗で冷たくなった肌着は交換したい。下着による締め付けも冷えを誘発するといわれており、「ブリーフより足の付け根を圧迫しないトランクスがよい」(川越医師)という。
食事はきちんと3食取りたい。仕事に追われて食事を抜いたりすると、体内の熱を作り出す"原料"を欠いてしまう。会議や夜の酒席などでは、ジュースやアルコールなど冷たい物を飲み過ぎないように注意し、できるだけ温かい飲み物を取るよう心掛ける。
長時間のデスクワークは足の血流の循環を鈍くし、足先の冷えにつながる。ストレッチなどをして定期的に筋肉をリラックスさせる体操が必要だ。運動不足だと体は冷えやすい。普段からウオーキングなどで体を動かし、血行をよくしておくことも大事だ。
医師や被服衛生学の研究家らでつくる「冷え研究会」の石川友章会長は「体が冷えると、心も冷える。ささいなことでいら立つようになり、他人との衝突も増える。精神の安定を保ち、円滑な人間関係を築くためにも、冷え性の予防は欠かせない」と強調する。
・着替えを用意し、外出時に汗をかいて冷たくなった肌着は取り換える
・腹巻きが効果的。下着は太ももの付け根の血流を圧迫しないトランクスが理想
・会議や夜の酒席では冷たい飲み物を極力避け、温かい飲み物をとる
・長時間に及ぶデスクワークではストレッチなど体操で筋肉の張りをほぐす
・ 休日には十分な休養をとり、ウオーキングなど適度な運動を心掛ける
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