コラーゲンが減る機序を解明 サブスタンスPが真皮mRNA発現を抑制
ポーラ化成工業は、紫外線や加齢に加え、心的ストレスが肌に悪影響を与えることを科学的に解明するとともに、それによる真皮ダメージを抑制する新素材を開発した。ストレスによって肌内部に放出される神経伝達物質のサブスタンスPが真皮線維芽細胞コラーゲンの発現を低減させ、肌の弾力性低下やくすみの原因となることを発見。さらにハスの胚芽抽出成分に同Pの受容体であるニューキロン1受容体(NK−1R)の発現を抑止する作用を見いだし、同Pによる真皮ダメージを抑制する新素材として実用化に成功した。同社では、これらの成果と新素材を今秋発売予定の化粧品に応用する方針だ。
サブスタンスPはアミノ酸11個からなるペプチドで、神経物質の1つとして種々の刺激により神経線維から放出される。心的ストレスなどによっても放出されるが、これまで同Pが真皮に及ぼす影響はほとんど知られていなかった。
同社では、これに関する研究を進めたところ、業界で初めて同Pが真皮線維芽細胞の1型コラーゲンおよび3型コラーゲンのmRNA発現を抑制することを見いだした。なかでも真皮上層部に多く存在し、他のコラーゲンに比べて透明度、光透過性が高い3型コラーゲンのたん白発現量は、同Pを添加後24時間で約17%も減少することがわかった。
この研究結果をもとに同Pによるコラーゲン産生抑制を防ぐ素材を探索した結果、ハスの胚芽から抽出した成分に効果があることを見いだし、同Pによる真皮ダメージを抑制する新素材として「ロータスエキス」を開発した。多年生水性植物のハスの実は2000年以上も発芽力を維持するほど生命維持力が高く、胚芽には発芽に必要となる栄養素や成分が濃縮・蓄積されていると考えられるほか、フラボノイド類などの成分も含まれている。
ロータスエキスが効果を示すメカニズムを調べたところ、真皮線維芽細胞におけるNK−1RのmRNA発現を低下させることがわかった。
今回の研究成果は9月10日からデンマーク・コペンハーゲンで開催される第44回欧州研究皮膚科学会で発表する予定。
提供:化学工業日報 2014年7月3日(木)