感染症:「助かると言えずつらい」 エボラ熱と闘う邦人看護師

 

西アフリカで流行するエボラ出血熱の死者が600人を超えた。国境なき医師団(MSF)からシエラレオネに派遣され医療支援に当たっている看護師吉田照美(よしだ・てるみ)さん(43)は16日までに電話取材に応じ、「患者に大丈夫、助けられると言えないことがつらい」と治療法のない感染症に対処する現場の苦悩を語った。

 吉田さんは6月下旬から、MSFが東部カイラフンに設けた医療施設で活動。エボラ熱にはワクチンがなく、致死率は25〜90%と高い。患者の熱を下げたり、頭痛を和らげたりする対症療法を続け、回復を待つしかない。病状の進行が予測できず、搬送されて2、3時間で亡くなる患者も。

 患者と接触する「汚染区域」では防護服を着用、注射針を扱う際には他のスタッフに当たらないよう細心の注意が必要だ。街中でも感染者がいる可能性があり、人に直接触れることは避けているという。

 吉田さんは「エボラ熱への恐怖がないわけではない。ただ、一番大変な患者や地域住民が感謝してくれ、やりがいはある。何とか沈静化させたい」と話した。

 世界保健機関(WHO)によると、西アフリカでの流行は過去最大規模。ギニア、シエラレオネ、リベリアの3カ国で、今月15日までに感染が確認または疑われる死者は603人に達した。(アブジャ共同=稲葉俊之)

 ※エボラ出血熱

 エボラウイルスが原因の急性感染症。世界保健機関(WHO)によると、1976年にザイール(現コンゴ)などアフリカ中部で初めて集団発生が確認された。野生のコウモリがウイルスの宿主と考えられており、人間同士では血液などの体液を通じて感染する。症状は発熱や頭痛、下痢、内出血や皮膚などからの出血。致死率25〜90%とされ、ワクチンや治療法は見つかっていない。医療従事者への感染も続いているとされる。

 

提供: 共同通信社 2014年7月17日(木) 配信

2014年9月9日更新