運動が苦手でほとんど泳げないという人にも始められる手軽な運動として、水中歩行や体操などの水中運動がある。その効果 を紹介する。

昔はプールで歩こうものならすぐに笛を吹かれて注意されたものだが、最近はプールで歩いている人を当たり前のように見かける。水中では、浮力の作用により体が軽くなり、ひざや腰にかかる負担が軽くなるという利点がある。

水中での歩き方に決まりはないが、それぞれの歩き方で効果 も変わってくる。よく見かけるように、前向きに大またで速く歩く方法は、水の抵抗を体の全面 に受けるので足のもも、すねの筋肉を多く使う。年をとって下半身の老化が進むと、筋力の低下によりちょっとした段差でつまずいたり転んだりする。そのような人には、足を上げるための筋肉を鍛える目的で、大またの水中歩行が有効である。

しかし、初めて水中で歩く人は、小またで、両手でバランスを取りながら歩くことを薦める。水中でバランスを崩すとパニックを起こしかねない。さらに、ももの筋肉を鍛えすぎると、腰の痛い人はかえって悪化させることがあるからだ。両手を前方に伸ばし、小またで、ひざを上げず、すり足でゆっくり歩くとよい。

この時に、おなかの筋肉を意識しながら、後ろ向きに歩くことも重要だ。後ろ向きに歩くことでおしりの筋肉をより使えるので、腰痛には効果 的だろう。

肩幅程度の歩幅で横向きに歩くのも、おしりの横の筋肉を使うことができ、腰痛や股(こ)関節痛の人に向いている。

気をつけなければならないのは、水の抵抗は体が大きい人ほど大きく、体の細い人は小さいということだ。つまり、同じ速度で歩いていても運動の負荷がその人の体形によって異なる。泳げない人も、まずはゆっくり歩くことから始めてみてはいかがだろう。  (国士館大学講師・医学博士   須藤 明治)

(2000.6.24日本経済新聞)