中国の山岳地帯が原産の「ダッタンそば」の健康への働きが注目されている。豊富なルチン成分が脳溢血(いっけつ)の予防や血圧を下げる役割を果たすという。料理方法も様々。アレルギー体質の人を除いては、試してみる価値がありそうだ。 |
東京・池袋の東武百貨店レストラン街にあるそば屋の「たつみ」。昨年6月からダッタンそばをメニューに載せており、中高年の女性客を中心に人気を呼んでいる。
日本で広く栽培されている普通種のそば粉に比べて粘り気が少ないため、小麦粉を混ぜてつなぎにしたり、寝かせる時間を長くするなどの工夫をこらした。普通のそばより、色が濃く、ほのかな苦みが特徴だ。「医食同源の考えからメニューに取り入れた」(小沢巽社長)
国内でも栽培
ダッタンはモンゴル系の一部族「タタール」が語源。ダッタン種のそばは主に中国雲南省や四川省の山岳地帯で古くから栽培されていたが、4年ほど前から日本でも乾めんやそば粉、お茶としても商品化されている。
楽天市場、ヤフーのインターネットショッピングでもダッタンそばは人気商品。西武百貨店、そごうは今年初めて年越しそば用のお歳暮としてダッタンそばの取り扱いを始める予定だ。伊藤園が昨年末から発売した「純そば茶」のように、ダッタンそばの実を焙煎(ばいせん)したそば茶も広く流通し始めた。健康志向の強い30代上が主な購入者という。
では、ダッタンそばにはどんな働きがあるのか。
「そば共通のポリフェノールの一種であるルチンが普通種の6−10倍は含まれている」と話すのは独立行政法人食品総合研究所の鈴木健夫理事長。普通のそば粉の場合、1グラムに約1ミリグラムのルチンが含まれるが、ダッタン種には6−10ミリグラムという。「日照量の多い高地が原産地のため、紫外線から身を守る手段としてルチン成分を多く含む種が生まれた」
鈴木理事長によると、ルチンには血管壁を柔軟にし、脳溢血などを防ぐほか、血圧を下げる働きがある。記憶力の維持や血液をサラサラにして体調を好転させる機能もあるという。
「欧州では脳溢血の予防として1日30−50ミリグラムのルチン摂取を勧めている」(鈴木理事長)ほどで、薬として飲むことも多い。現在にもダッタンそばを主食にする中国の少数民族には生活習慣病が少ないようだ。
国内のそば産地でもダッタンそばの栽培と普及活動が始まっている。これまでは中国からの輸入品が大半だったが、「遺伝的にルチン成分が多く蓄えられる性質のため、日本の平野、盆地で栽培されたものでも量的にはほとんど変わらないはず」(鈴木理事長)。
食べ方も様々
北海道では5月に道内の生産者、製粉業者、そば屋が中心になって「北海道ダッタンそばの会」を結成、ダッタンそば料理を研究している。
森清副会長に様々な食べ方を教えてもらった。まずは、パスタ(表参照)。小麦粉の2割のダッタンそば粉を混ぜるだけで、苦みの全くないパスタ料理ができる。もちろん、ギョーザの皮としても利用できる。
ラーメンのスープでも食べられるし、180度の油で1、2分素揚げすれば、おつまみとしても楽しめる。デザートには小麦粉、牛乳、砂糖と合わせて焼くクレープがいい。
そば茶の茶殻も再利用できる。「お茶として飲んだ後でも、茶殻がルチンを含む」(森副会長)とみられるからで、焙煎特有の香ばしさを料理に生かせる。
例えば、そばの実のあんかけ。かたくり粉を溶いて、茶殻を入れ、しょうゆ、酢、砂糖などで味付けをして、揚げた魚などにかける。茶殻を春巻きの皮で巻いて揚げる料理もある。
そのほか、茶殻をご飯と一緒に炊いたり、カボチャスープのアクセントとして使うなど使い道は多い。
産地の北海道・当麻町では日常的にダッタンそばを飲食する家庭が増えている
ダッタンパスタの作り方
【材料】(4人分)
小麦粉(セモリナ種)400グラム、ダッタンそば粉80グラム、卵2個、塩、水
【作り方】
@ 塩分濃度2%の150グラムの塩水を作り、沸騰させさましておく
A 小麦粉、ダッタンそば粉、全卵、塩水を混ぜ、耳たぶくらいの硬さになるまで練る。ラップで包み、1、2時間ねかす
B 厚さ1−2ミリに生地を伸ばし、3−5ミリ間隔に切る。
C 沸騰した湯に入れ、3、4分ゆでる
D ミートソース、クリームソースなど好みのソースをからめる |
|