肥満予防に効果
アレルギーにも

にがりに注目が集まっている。肥満防止やアレルギー体質の改善に効果があるといわれ、お茶やコーヒーに入れたり、ご飯を炊くときに混ぜたりなどとり方も様々。にがりの効能と効果的なとり方を学ぼう。


山口県下関市の吉母浜。響灘の荒波がうち寄せる海沿いの小高い丘に丸福水産グループ(北九州市)の天然塩・にがり工場がある。

沖合い約100メートル、深さ15メートルの地点から海水をポンプでくみ上げ、竹炭などを使ってろ過したうえで50トンのプールに蓄える。3段に並べた釜で炊き、どろどろになった塩の結晶を作業員がスコップですくい取る。遠心分離機にかけて塩とにがりを分ける。1日50トンの海水からできるにがりは200リットル。300ミリリットル入りの製品で約600本分にあたる。

通販で拡大
丸福水産は昨年からにがりの本格販売を始めたところ、ブームに乗って販売が拡大。通信販売などで月間1トンの売り上げがある。原賀一彰・商品開発部部長は「工場は24時間、三交体制。盆と年末年始以外は休日がない」と顔をほころばせる。

もともと、にがりと言えば豆腐を固める材料として知られる。豆乳ににがりを加えれば自宅でも簡単に豆腐を作れる。それが消費者の健康志向を背景に昨年から急速に人気が高まった。にがりが健康に良いと言われるのはなぜか。

奥田拓道熊本県立大学教授は「現代人の食生活で不足しがちなミネラルが豊富に含まれている」80種類のミネラルが含まれると言われる。

実は1971年から97年まで旧専売制の下で塩の製法が統一され、海水に含まれる様々なミネラルを除去していた。「日本人は30年近くもの間、ミネラルがほとんどない塩を取っていたため、肥満などの生活習慣病やアレルギー体質を招いた可能性が強い」(奥田教授)

便秘改善の働きも
例えば、にがりの効能の1つに便秘改善があるといわれる。主成分のマグネシウムには腸で水分を吸収し、便を軟らかくして排せつしやすいようにする働きがあるためだ。奥田教授がマウスを使って実験したところ、体内で脂肪の吸収を遅らせる効果があることが分かった。個人差もあるが、3日程度で便秘が改善、1−2キロ体重が落ちるという。

アレルギー症状はアレルギーを引き起こす物質が体内に入ると、化学物質のヒスタミンを排出、花粉症やアトピーなどを引き起こす。奥田教授は「にがりはヒスタミンの排出を抑制する効果もある」と話す。

普段の生活でにがりを効果的に取り入れるにはどうすれば良いのか。

にがりの原液をなめてみれば分かるが、苦く、決しておいしいものではない。1日1ミリリットル、水滴状で出てくるものなら15−20滴で十分。コーヒーやお茶なら1回、2、3滴垂らせば良い。もっともにがりは水に比べて重く、下にたまりやすいため、よくかき混ぜよう。

ご飯を炊くときに使うならコメ1合に1滴が適当。女子栄養大学の松本仲子教授は「マグネシウムやカリウムには味わいをまろやかにする働きがある。煮物などに使っても良い」とアドバイスする。

食事以外でも入浴時に浴槽に入れたり、化粧水を作ったりしてお肌の手入れに使うこともできる。うがいや歯磨きでの活用や、変わったところでは畑ににがりをまくと、土壌改善になるという。いろんな活用法を表に示した。

1日20滴が目安

注意点はある。マグネシウムはそもそも市販の便秘薬に使われる物質で、にがりも取りすぎると下痢を引き起こす可能性がある。1日最大20滴と適量を守りたい。「大量に取るのは健康を害する危険性がある」(奥田教授)

塩分が残っていると取り過ぎになるため、腎臓病などを患っているなら医師に相談しよう。

ブームに乗って大手から中小企業までにがりや関連製品の製造・販売に参入しており、海水から抽出したものや化学的に作ったものなど製法も異なる。価格も数百円から数千円までばらつきがある。自分に合った製品や使い方を見極めることが大切だ。

にがりの効果的な活用法

<にがり水>

水1リットルににがり2−4ミリリットル。にがりを入れたらよく振って混ぜ、冷蔵庫などに保管する。1日に0.3−1リットルを数回に分けて飲む。

<料理への使用>
ご飯を炊くときはコメ1合に1滴、煮物なら数滴。みそ汁、コーヒー、お茶に数滴。

<にがりローション>
水1リットルににがりを3−8ミリリットル。ローションは飲用に比べて濃度を2倍程度にする。手に取って肌に付けるか、スプレータイプの容器で吹く付ける。吹き付けたら軽く手のひらでこする。

<入浴時>

200ミリリットルの浴槽ににがりを18−24ミリリットル。乾燥肌の場合は40度のお湯にゆったりとつかると効果的。

丸福水産のホームページ(http://www.saishinnosio.com/)などをもとに作成
2004.3.6 日本経済新聞