胃腸を休ませて!
朝はジュース
食欲の秋。つい食べ過ぎて、体重計に乗って後悔することも多い。日ごろ酷使している胃腸を休めるには断食が効果的。朝食抜きや週末に限定した方法を薦める医師らも増えている。

兵庫県淡路島。瀬戸内海を見渡す丘の上に五色県民健康村健康道場(http://www2u.biglobe.ne.jp/~dojo/)がある。兵庫県と五色町が運営、医学博士の笹田信五道場長が生活習慣病を防ぐ狙いで考案した断食療法を実践する。1982年の開設以来、参加者は累計約2万人に達した。

断食療法は4日間の体験コースから16日間の本格的なものまで用意。断食中は牛乳や果物などで作ったジュース(200cc、100キロカロリー)を飲み、1日約2リットルの水分を取る。体温、脈拍などを毎日測り、平日は笹田氏の診断を受ける。

午前7時に起床し、午後10時に就寝するなど規則正しい生活を送る。昼間はリラックスできる呼吸法の学習や、読書などでのんびり過ごす。リフレッシュを目的に参加した大阪の50代の男性は「思ったほどつらくなかった」と話す。

断食は胃腸を休めるとともに、体内にたまった老廃物を排出し、自律神経の機能などを回復させる効果があるといわれる。体内には一般的に半日分の糖分と2ヵ月分の脂肪が蓄えられており、断食で尽きると、これらがエネルギーに変わり、体重も減少する。笹田氏は「個人差はあるが1週間の断食で約7%減量できる」と話す。

週末だけでも
もっともサラリーマンやOLは簡単に休みが取れない。それでは普段の生活で断食を実践する方法を専門家に聞いてみよう。

ニンジンジュースを使った断食療法で多くの著書があるイシハラクリニック(東京都江東区)の石原結実氏は「朝食を抜いてジュースを飲もう」と訴える。石原氏の考え方は「過食気味の現代人は1食抜けばちょうど『腹八分目』になる」と実に分かりやすい。

ジュースは新鮮なニンジンとリンゴを用意してジューサーで絞るのが望ましいが、市販のものでも構わないという。また、すり下ろしたショウガを入れた紅茶を飲んで代謝機能を高め、老廃物の排出を促すと良い。「昼食はそばなどで軽く済ませ、夜は和食を中心にした一般的な食事をとっても大丈夫」(石原氏)

静岡県伊東市で保養所「やすらぎの里」(http://www.y-sato.com)を運営する大沢剛氏が勧めるのは週末の1日だけ断食する方法。金曜日の夕食から量を抑えて体を慣らし、土曜日の朝食と昼食は野菜ジュースだけで補い、夕食はおかゆなどを食べる。大沢氏は「休みの土曜日なら自宅で静かに過ごせるため、取り組みやすい」と説く。石原氏も「朝食抜きに慣れたら、週末1日断食に移行していくといい」と語る。

断食は一種のショック療法だから、実行するには様々な注意事項がある。まず、糖尿病など持病を患っている人や60以上の高齢者は避けるべきだ。2日以上の断食は医師の指導を受けた方がいい。運動も軽い散歩にとどめよう。

回復食に注意

断食後の食事も気を付ける。胃けいれんや胃拡張など体調に異変が生じるのは回復食をたべ過ぎたとき。おかゆや野菜、豆腐など消化の良いものを中心に量を徐々に増やすのが適切だ。

「やすらきの里」で出される食事の写真(左)を見てほしい。下の盆が断食終了後の最初の朝食。3分がゆとみそ汁、梅干しで、全部で120キロカロリー。上の膳が2回目(夕食)。玄米がゆ、豆腐とふの煮物、ジャガイモの煮物、梅干しで合計200キロカロリー。物足りない印象を受けるが、断食後だと結構、おいしく食べられる。

断食後に付きまとうのがリバウンドの恐怖。せっかく胃腸の休息と減量に成功しても、食べ過ぎて体重が戻ったら元の木阿弥。笹田氏は「食べ過ぎの原因となるストレスを感じないようリラックスに努めよう」とアドバイスする。

一見難しそうな断食も「正しく実践すれば簡単で安全」(石原氏)。各地の断食道場が用意している体験コースに参加し、やり方を覚えるのもいいだろう。

石原氏が提案する断食中のメニュー

朝食抜きのケース
朝食 ニンジンジュース(ニンジン2本とリンゴ1個)、ショウガ入り紅茶(蜂蜜入り)
昼食 とろろそば(七味唐辛子、ネギを多用)
夕食 和食を中心に。酒類もOK。

週末1日のケース
当日 朝食 ニンジンジュース(ニンジン2本とリンゴ1個)
午前10時 ショウガ入り紅茶、またはみそ汁の汁のみ
昼食 ニンジンジュース
午後3時 ショウガ入り紅茶
夕食 ニンジンジュース
(注)めまいなど低血糖の症状が出たら、ショウガ入り紅茶か黒アメを取る
翌日 朝食 白米のご飯を茶わんに7分目程度(黒ゴマをかける)、梅干し2個、しらすおろし、豆腐とワカメのみそ汁
昼食・夕食 脂っこいものを避けて軽めに
2003.10.18 日本経済新聞