「食べ物の流行かぶれ」を指すフードファディズムの典型例として多いのが、サプリメントへの過信。どうしても足りない栄養素を補充するという本来の使い方を逸脱して、ファッションのようにかっこよさそうな栄養のとり方と考える人も増えつつある。こんな人が気をつけなくてはならないのは、サプリメントの量をあまり考えないで摂取したときに起こる過剰症だ。

大妻女子大家政学部の池上幸江教授は「例えば妊娠している女性が『おなかの子どものことを考えると栄養が足りないから、ちょっと多めにビタミン剤を飲んじゃおう』などと考えてビタミンAを取りすぎると危ない」と指摘する。

ビタミンAはウナギやレバーなどに多く含まれる栄養素。魚の肝臓を食べ過ぎた漁師が肝障害になった例はあるが、通常の食生活では過剰症は起こりにくい。ところが簡単に摂取できるビタミン剤の量を間違えると妊婦が奇形児を産み、子どもに骨の異常が出る例もある。

日本人にとって、どれくらいの栄養量が必要かを示す栄養所要量の第6次改定(2000年度から)で初めて示されたのが「許容上限摂取量」。ビタミンAをみると所要量が5歳児までは千IU(レチノール換算で300マイグラクロム)、成人男性で2千IU(同600マイグラクロム)、成人女性で千8百IU(同540マイグラクロム)。IUとはビタミンの国際単位のこと。

これに対して上限摂取量は子どもで4千IU,大人で5千IU。所要量の2.5−4倍に過ぎないのだ。サプリメントも含まれている栄養素の量をチェックし、きちっと1日の必要量を守ることを心がけたい。

ビタミンの過剰症
ビタミンA 急性中毒(脳せきずい液圧の上昇)
慢性中毒(皮膚のはく離、脱毛など)
胎児奇形(妊娠)
骨の異常(子ども)
ビタミンD 高カルシウム血症、腎臓障害など
ビタミンK おう吐、腎臓障害
ナイアシン 皮膚の発赤作用、消化管・肝臓障害

ビタミン・ミネラルのアンバランス(池上幸江著)より


2004.9.11 日本経済新聞