講習会参加が習得への近道
地震・台風・・・災害時の心得
今年は台風や地震が相次いだ。救急車や病院に普段並みの対応を期待できない可能性が高く、応急手当など災害時の心得を習得しておきたい。タオルや段ボールを使えば骨折した手足を保護できる。持病があれば服用薬を覚えておくと、救護所で対応してもらいやすくなるという。 |
「地震の前ならば10分で到着した所へ行くのに、30分かかった」。新潟県中越地震で幹線道路に段差が発生。救急活動が思うようにいかなかったと、長岡市消防署の担当者は振り返る。
同署によると、中越地震では救急車の到着が遅くて十分な対応ができず亡くなった人は幸いいなかった。だが、心臓が停止してから3分、出血多量なら30分で死亡率はそれぞれ50%に達する。
都内では平時でも救急車が到着するまでに5−6分かかる。災害時はもっとかかるか救助に来てくれない恐れがある。東京救急協会の竹内栄一指導課長は「応急手当の知識の有無が人命を左右することが少なくない」と話す。
同協会では東京消防庁の委託で、応急手当の仕方を指導する講習会を都内の各消防署でほぼ連日開いている。大出血時の止血法と心肺蘇生(そせい)法を学ぶ普通救命講習が3時間で千円。これに外傷の手当てや傷病者の管理・搬送法などが加わる上級講習なら8時間で2千2百円。1994年の協会発足以来、受講者は百十万人を超える。
全国でも多くの自治体の消防署が同様の指導に取り組んでいるという。「講習会を活用して正しい手法を習得すると役に立つ」(竹内課長)
例えば心肺蘇生。倒れている人がいたら、まず周囲の安全を確かめてから意識の有無を確認する。意識がない場合は119番など助けを求めてから気道を確保。呼吸がなければ人工呼吸を実施する。それで呼吸や動きが回復しなければ心臓マッサージと組み合わせて交互に繰り返す。回復したか注意しながら、救急隊員が来るまで継続する。
災害時はけが人も多い。対処の基本は@安静にするA冷やすB固定するC高く上げる――の4点。これらを意味する各英単語の頭文字をとってRICE法と呼ぶ。骨折した手足を固定する時も雑誌や段ボール、タオルなど身の回りの物を当ててから三角きんなどで縛るとよいという。
日本赤十字社医療センターの加藤恵一麻酔科・集中治療科部長は「けがの手当ては難しくない。やけどを水で冷やすなど最低限のことだけでも救急車が到着する前にやっておけば、病院での治療の経過がよくなる」と語る。
応急手当に必要な最低限の道具をそろえた救急箱も日ごろから準備しておきたい。清潔なガーゼや包帯、消毒薬、ピンセット、持病がある人なら日ごろ服用している薬などは必需品だ。薬の使用歴などを記した「お薬手帳」も普段から携帯しているとよい。
ただし大規模な天災の場合には、事前の準備も役に立たないことがある。混乱していると、救急箱や薬を持ち出す余裕はない。日本薬剤師会の秋葉保次副会長は「救急箱や薬は二の次。まず自分の身の安全を確保するのが先決」と強調する。
貴重品はもとより、持病の薬などを忘れても、とにかく安全な場所に避難する。逃げ遅れるとかえって命を危険にさらすことになる。
事前に準備したものを生かせなくても気にすることはない。災害時は、医師や薬剤師による救護所が設置される。新潟県によると、今回の中越地震では90を超える医療チームが現地に赴いた。現地入りしたボランティアの薬剤師は約千人。歯科医も駆けつけ避難所などを巡回。医療関係者がフル稼働して支援体制が出来上がる。自治体や製薬企業も協力して医薬品が届く。被災者の診療代は原則無料という。
必要なときは救護所を尋ねて病気や薬の名前を告げれば対応してもらえるので、日ごろからきちんと覚えておくとよい。仮に薬の正確な名前を思い出せなくても、通院先の病院さえ分かれば医療関係者同士が連絡を取り合って薬を割り出せる。人口透析患者などは必要に応じて転院先も紹介してもらえる。
Rest [安静にする]
無理に動かしたり、ひっぱったりするとけがが悪化する |
Icing [冷やす]
内出血や腫(は)れを抑える |
Compression [圧迫・固定する]
痛みを和らげ、出血を防ぐ |
Elevetion [高く上げる]
浮腫(ふしゅ)よる悪化を防ぐ |
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◆心肺蘇生や止血法を学ぶなら
東京救急協会(都内在住・在学・在勤者が対象。申し込みは電話かインターネットで。
(電話03-5276-0995、http://www.teate.jp)
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◆災害時の対応の仕方なら
総務省消防庁「生活密着情報」http://www.fdma.bo.jp/general/life/index.html |
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