「ごまかす」という俗語がある。これはどんな食品もゴマを使うと美味に化するということから生まれた表現だそうだ。この通り、料理に上手に活用しているのが韓国。焼き物、煮物、鍋物、あえ物などほとんどの料理にゴマを使う。

韓国は長い歴史の中で、しばしば飢饉(ききん)や食糧難に見舞われてきた。その時、山菜が救荒植物としての役割を果たしてきたのである。春、早々に野山に生える山菜。ぜんまい、たらの芽、フキ、ウド、タンポポなどをとって食べた。味付けにゴマやゴマ油を使うと大変おいしく食べられることを知った。ぜんまいのナムルはゴマ油でいためてから、すりゴマとしょうゆ、砂糖少々であえる。手軽だが大変おいしい山菜料理だ。

ところで、ゴマは約2千年前の中国最古の薬物書「神農本草経」に元気や体力を増し、長く取り続けると身の動きを軽くし、老いさらばえないと書いてある。椙山女学園大学の山下かなえ教授は老化しやすいマウスにゴマを加えた飼料にを7カ月にわたって与えたところ、老化が抑えられたと述べている。

栄養面からみると、たんぱく質、良質な脂肪、日常不足しがちなカルシウム、鉄、亜鉛などミネラル、ビタミンB1、B2、Eをたくさん含む。足りないのはカロチンとビタミンCくらい。特記すべきことに、ゴマリグナンという物質は、がん、動脈硬化、老化の原因になる活性酸素を消し去る働きがある。

ゴマが体によいからといっても、少し食べるくらいでは意味がない。1日大さじ1杯くらい必要。色々な料理に毎日、毎食入れて、たっぷりとりたい。
(新宿医院院長  新居 裕久)
2005.2.5 日本経済新聞