凝り・疲れ目解消
鼻詰まりに有効

美容院や理髪店で洗髪する際、頭皮をもんでもらうと気持ちいい、という人は多いだろう。それは頭部にあるツボや凝りやすい筋肉が刺激されるためだ。ツボの場所を知っておくと、自分で手軽にスッキリすることができる。自宅でできる頭部マッサージの方法を紹介しよう。

頭をさわると、頭がい骨の上を薄い頭皮が覆っているだけのようだが、間には血管や老廃物を流すリンパ管が通っている。頭皮がピーンと張っているのが健康な状態で、押した時に指が沈む感覚だとむくみがある状態。自覚がなくても身体のどこかに不調を来しているサインになることもあるという。

富山県国際伝統医学センターの上馬場和夫医師は「頭部は、現代医学はもとよりインドの伝承医学であるアーユルヴェーダ、中国のツボ療法でも重要なポイント」と説明する。頭部には、頭や顔の大部分の感覚と咀嚼(そしゃく)運動を支配する三叉(さんさ)神経などがある。頭を使うと精神的なストレスを受け、首を支える側頭筋やあごを持ち上げてかみ合わせる咬(こう)筋など、多くの筋肉が凝ることがある。そこを軽くもみほぐすことによって、心地よくなるとされる。

気の通り道が集中

ツボ療法では気の通り道、経絡(けいらく)のツボが頭部に集中している。例えば、全ての経絡が集まる頭頂部にある百会(ひゃくえ)は「心にも体にも治療効果がある」(上馬場氏)要所で、痔の治療でも刺激するという。

鍼灸(しんきゅう)の治療院、杏鈴堂(東京・文京)の院長、鈴木由紀子さんは「頭皮をもみほぐすと、目の疲れやストレスなどに効く複数のツボを刺激するので、そう快感が得られやすい」と語る。足や手の裏にあるのが臓器や消化器官に有効なツボなのに対し、頭部には目や鼻など感覚器官のツボが多いからだ。

鈴木さんにパソコンで目を使いすぎたり、花粉アレルギーなどで鼻が詰まったりする人に有効なツボを教わった。
疲れ目にはイラストで示した上眼点と太陽を押すと症状が和らぐ。上眼点は親指を使って下から押し上げるようにする。鼻詰まりには上星と玉枕が有効だ。

本場の英国で資格をとり、精油を用いたマッサージなどを施すアロマセラピストの三本尚実さんは、「髪や肌などの美容面だけでなく、血行促進や緊張緩和、ストレスによる頭痛・疲れ目防止などの効果もある」と話す。経営するサロン「ムーンドロップ」(東京・杉並)には、全身だけでなくヘッドマッサージを希望する女性客も増えたという。

深く腰掛け深呼吸
三本さんが推奨するヘッドマッサージのポイントは、足を組まずにしっかり床に付け、深く腰を掛けて深呼吸すること。交感神経のスイッチが副交感神経に切り替わるよう、リラックスした状態で臨む。地肌に近い髪をつかんで引き上げたり、ツボを意識しながらもんだり、さすったり。「髪のキューティクルを傷めないように、風呂上りに髪を乾かした後でしたほうがいい」(三本さん)

ツボ押しグッズなどは使わず素手で行うこと。一カ所に力を加えすぎて極端に痛い刺激を与えないようにしよう。また、家族や友達ら心地よくマッサージをしてくれる人にお願いすると、「症状が改善するなど生理的な効果だけでなく、ふれあいによる心理的な効果も得られる」と上馬場氏は言う。

風呂上りにゆったりした気分でつぼを意識しながら頭部マッサージをすれば、1日の疲れが和らぎ、翌朝、快適な気分で目覚められそうだ。
簡単にできるヘッドマッサージ


簡単にできるヘッドマッサージ

@いすに深く座り、両足を床につける
A大きく3回、ゆっくり深呼吸をして体の緊張をほぐす
B指を開き、頭皮全体をやさしく、円を描くようにゆっくりマッサージ
C手のひら全体を使うようにして頭皮をつかみ、リズミカルに引き上げる
D髪の頭皮に近い部分をにぎり、前後や左右に動かす
Eこめかみを親指のつけ根で押さえ、大きく円を描くようにゆっくり回す
F後頭部と首の間に親指を置き、もんだりさすったりする
G頭皮全体を優しくマッサージし、最初に息を吸い、吐きながら前に倒し、同様に吐きながら後ろに倒す。それを3回繰り返す。

覚えておきたいツボ

前頂(ぜんちょう)→うつ、情緒不安定
両耳の延長線上、百会の前あたり
上眼点(じようがんてん)→目の疲れ
眼球の入っているくぼみの上側を眉頭に向かって押し上げる
百会(ひゃくえ)→ストレス
後頭部の左右の中心線上で、前髪の生え際と脳戸の交差する点
天柱(てんちゅう)→首のコリ
うなじ中央部のくぼんだところの両脇にある筋肉のほほ中央
上星(じょうせい)→鼻詰まり
前髪生え際の1センチメートルほど上
太陽(たいよう)→目の疲れ
目尻を側頭部側に延長したとこめのくぼみ
脳戸(のうこ)→うつ、情緒不安定
後頭部の丸い骨が突出した部分の真下
玉枕(きょくちん)→鼻詰まり
脳戸よりやや左右下にずらしたところ
風池(ふうち)→首のコリ
僧帽筋(首の大きな筋)の両外側のくぼみ
2005.2.26 日本経済新聞