検査用キットも市販
ご飯?油物?どっちを減らす


自分が持つ肥満遺伝子によって、ダイエット法を変えたほうがいいとする「遺伝子型ダイエット」が注目されている。市販の検査キットもあるが、体形や食べ物の好みなどからセルフチェックも可能だ。

肥満に悩む大学生のHさん(21)はこの春、ご飯を減らすダイエット法に取り組んだ。1カ月間頑張って2キログラム減と一応成果は上がったものの、ニキビが増えるなど体調が今ひとつ。

そんなとき、Hさんは「遺伝子型ダイエット」を知った。簡単な検査で遺伝子を調べると、自分に合うダイエット法がわかるという。早速、検査を受けると、1週間後に「食事の脂肪を減らすこと」などのアドバイスが届いた。

方針を切り替えて1カ月。脂肪の摂取量を減らしただけなのに体重が5キログラム、ウエストは8センチも減った。34%だった体脂肪率が30%を切ったことから、減ったのは主に体脂肪と考えられる。ニキビもきれいに消えた。

このカギを握るのが「肥満遺伝子」だという。

私たちの体は、親からもらった遺伝子を基につくられる。顔やかたちや体格が親に似るのはそのためだが、「太りやすさ」を決める遺伝子もある。それが肥満遺伝子だ。現在までに、50種類ほどの肥満遺伝子が発見されている。

このうち日本人に多いのは、表に挙げた3種類だ。京都市立病院糖尿病・代謝内科の吉田俊英部長の研究によると、日本人の75%は、これら3つのうち少なくとも1つを持つという。2つ以上持っている人も2−3%いる。

この3遺伝子は「体のどこに脂肪が付きやすいか」にも関係している。

例えば、「リンゴ型」と呼ばれる肥満遺伝子を持っている人は、お腹の中に内臓脂肪がたまりやすく、太るとお腹がせり出してくる。「洋ナシ型」の人は皮下脂肪が多く、特に女性の場合、お尻や太ももに脂肪が付くのが特徴だ。

太りやすい食べ物も対照的。リンゴ型はご飯やめん類などの糖質で太りやすいのに対し、洋ナシ型は肉や揚げ物など脂肪で太るという。脂肪を減らして減量したHさんは洋ナシ型だ。

米国で医師として取り組んだ研究をもとに、遺伝子型に応じたダイエット法を提唱する日本ウェイトマネージメントの佐藤芹香代表はこう説明する。「リンゴ型遺伝子をもつ人の体は、糖質を利用する効率が低い。だから食べた糖質があまって血糖値が高くなりがち。それなのに、リンゴ型の人はたいてい、ご飯やめん類に目がない。つまり太りやすい食べ物は本人の好みであることが多い」。一方、洋ナシ型の人は肉や揚げ物を好むという。

もう1つの遺伝子型である「バナナ型」は、食べても太りにくい「やせ体質」。筋肉量が少なく、一度太るとほかのタイプよりやせにくいという。肥満を避けるためには、筋肉の材料となるたんぱく質をとって、筋肉をつけるエクササイズをするのがいい。

冒頭のHさんが購入した「肥満遺伝子検査キット」は、日本ウェイトマネージメントが販売しているもの。口中を綿棒でぬぐって宅配便で送ると、1週間ほどで3遺伝子の有無を調べた結果が届く(31,500円)。インターネットや一部店舗で販売中だ。

キットを使わなくても、体形などから型をある程度判別できる。太りやすい場所は目安の1つ。「リンゴ型の人は、太ってきたときジーンズのホックが留まらなくなり、洋ナシ型は太ももやお尻が引っかかって上がらなくなる」と佐藤代表。さらに詳しいチェック項目が記載された、佐藤代表の著書「遺伝子型ダイエット」(日経BP)もある。

肥満遺伝子は、特定の病気の発症リスクにも関している。自分の遺伝子型に合ったダイエット法は、かかりやすい病気を防ぐ道であるともいえそうだ。
(日経ヘルス編集部)



日本人の遺伝子型は大きく分けて3タイプ

リンゴ型(β3AR遺伝子)
●日本人の約34%
●内臓脂肪でお腹ポッコリ
●ご飯、パン、もち、ビールなど糖質が大好き
●糖尿病、脂肪肝などのリスクが高い
ダイエットには→糖質を減らす

洋ナシ型(UCP1遺伝子)
●日本人の約25%
●皮下脂肪が多く、女性は下半身太り
●肉、揚げ物、ケーキ、チーズなど脂肪が大好き
●女性は婦人科系病のリスクが高い
ダイエットには→脂肪を減らす

バナナ型(β2AR遺伝子)
●日本人の約16%
●筋肉が少なくやせ形だが、一度太るとやせにくい
●野菜、魚介、豆腐などサッパリしたものが好き
●低血圧、うつ病などのリスクが高い
ダイエットには→たんぱく質を増やす

(日経ヘルス編集部作成)



2005.10.1 日本経済新聞