お手洗い以外の場所で尿がもれてしまった経験、ないだろうか? 実は多くの女性が出産などをきっかけに尿モレの悩みを抱えている。対策はあるので、悩み解消への一歩を踏み出してみよう。
アキコさん(35)が初めて尿モレを経験したのは5年前に長男を出産した直後だった。外出先から自宅まで走って帰ったところ、玄関に入ったときに太ももがぬれるほど尿がもれてしまっていた。それまで尿モレとは無縁だったが、今も走ったときやくしゃみをしたときに“あぶない”と感じている。
尿モレ(尿失禁)とは、自分の意思に関係なくトイレ以外の場所で尿がもれること。成人女性の3人に1人が尿モレ経験者といわれる。
中高年だけでなく、30歳代の経験者も実は多く、仕事に支障が出たり外出をためらったりなど、QOL(生活の質)が著しく低下する。だが、恥ずかしさが先立って誰にも相談せずにいる人が多い。
東京女子医科大医療センター泌尿器科講師の巴ひかるさんによると、女性の尿失禁は主に腹圧性と切迫性に二分できる。腹圧性はくしゃみや運動で腹に力が入ったときにもれる。切迫性は突然に抑えられないほどの尿意がおきる。
腹圧性尿失禁は骨盤底筋が緩むのが原因。女性は特に妊娠・出産や体重増、加齢などでぼうこうや子宮を支えている骨盤底筋に過度の負荷がかかって緩む。ぼうこうや尿道はぐらぐらのハンモックに乗った状態になり、くしゃみなどで腹圧がかかると漏れてしまう。切迫性は尿があまりたまっていないのにぼうこうが収縮して急に尿意がおきる。原因は不明のことも多い。
巴さんは「尿モレは治療できる」と力説する。病院に行くことには抵抗がある人には、自分でできることから始めよう。まず、自分の尿モレのタイプを知ること。(表参照)。タイプによってできる対策が少し異なるためだ。
尿モレ対策の第一歩は骨盤底筋体操だ。腹圧性、切迫性の双方に効果的だ。排せつ問題に取り組む日本コンチネンス協会の新島礼子さんに体操のコツを聞いた。
体全体をリラックスさせたら足を肩幅に開き、お尻と膣(ちつ)を同時に締める。1秒ほど収縮させてすぐ緩める動作を5回、続いて10秒ほど収縮させて締める運動を5回。これを1セットとし1日4セットほどやってみよう。
姿勢はあおむけ、座った状態、机に手をついた状態で(イラスト参照)。浴槽の中なら実際に手を添えて筋肉が収縮しているか確かめられる。寝る前、会社の昼休み、通勤電車の中といったように体操の時間を自分の生活に組み込めば、し忘れを防げる。3カ月ほど続けて効果の有無を確認する。
腹圧性の場合、骨盤底筋に力がかかりすぎないように注意する。肥満に気をつけ、重い物は持たないこと。腰痛や産後の体形回復のためのコルセットも要注意。締めすぎると骨盤底筋に負荷がかかる。
切迫性は自分でできる対策は限られるが、尿意がおきたときに少しだけトイレに行くのを我慢する「ぼうこう訓練」をしてみよう。我慢するとぼうこうの収縮がいったん止まる。我慢する時間を少しずつ延ばしていくのがコツ。また過剰な水分の摂取も尿モレを助長するので要注意だ。
下着につける専用パッドは少量用から多量用なでそろう。例えばユニ・チャームはパンティーライナーにポリマーを組み込んだ製品を昨年発売している。
体操の効果が感じられない場合は泌尿器科や泌尿器も扱う内科、婦人科へ。切迫性は抗シリコン薬が治療の中心。腹圧性も薬があるほか、尿道の下にテープを通して支え、モレをなくすTVT手術がある。ただし薬は対症療法だ。
日本コンチネンス協会では電話相談も実施。インターネットにも詳しいサイトがある。登録すれば専門家にメールで相談できるサイトなどもあるから、病院に行く前に利用するのもいいだろう。
(ライター 藤原 仁美)
(注)いずれの姿勢でも体をリラックスさせ、足は肩幅に
@あお向け
ひざを軽く立てて
A机に手をついた姿勢
肩幅に開いた手を机や台について上半身の体重をかける
顔は上げて背中を伸ばして
Bすわった姿勢
背中を伸ばして顔を上げて
Cお風呂の中
手でさわって筋肉の動きをたしかめて
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