不要になった細胞が取り除かれる過程でDNAがうまく分解されないと、関節リウマチになることが、大阪大大学院生命機能研究科の長田重一教授らのマウスを使った実験で分かった。DNAを分解する酵素を人為的に働かなくしたところ、関節リウマチによく似た関節炎を起こしたという。関節リウマチは原因不明の病気で、原因解明や治療薬の開発につながると期待される。26日付の英科学誌「ネイチャー」に掲載される。

関節リウマチは、指やひざなどの関節がこわばり、痛みやはれを伴う病気で、約1%の人が発症する。病気が進むと骨が壊され、関節が変形。根本的な治療法はない。

長田教授らは、不要になった細胞が「自殺」する仕組みの研究で、マクロファージと呼ばれる免疫細胞が自殺した細胞を内部に取り込み、分解することを突き止めた。DNAもマクロファージの酵素が分解していた。

マウスでこの酵素が働かないようにすると、8カ月以内に指先、足首、ひざが関節炎となった。マクロファージ中には、DNAが分解されずに残っていたという。

関節リウマチは、炎症を起こすたんぱく質が関節で多量に放出され、発症すると考えられている。マクロファージは、分解されないDNAが内部にあると炎症を起こすたんぱく質を出す性質があり、このため関節リウマチになったとみられる。今後、人も同じ原因で発症しているのか調べる必要があるという。

長田教授は「細胞死は体の中で常に起きているが、きちんと掃除されないだけで関節リウマチになると分かり、驚いた。関節リウマチの原因は複数あり、そのうちの一つという可能性はある」と話している。【根本毅】


2006.10.29 毎日新聞